四話目 ページ5
小さな頃、友と夢を語った。
その内容はどの様なものだったのだろうか。
正面に座る、語り相手の友ですら思い出せないのだから、仕方ないのかもしれない。
「まあ、覚えていても虚しいだけさ」
「そこらの子供は純粋だからな」
「そうさ。まるで天使、今は穢れの塊」
「俺を見ながら言うな」
和夫は顔を顰めた。
それに笑う男、倫太郎。
幼少からの友であるのだが、時おりこうして意味もなく訪ねてくるのだ。
「しかし、お前はいつも唐突だ。
いきなり来て、脈略もなく夢の話」
「なにね。
近所の子が言うのさ、夢がどうだのなんだの」
「...純粋だなぁ」
和夫はそう言いながら、文机の引き出しから煙草を取り出した。
マッチをすり火をつけた。
煙草から口を離し息をはけば、あっという間に部屋に煙が立ち込める。
すると、倫太郎が眉をひそめた。
「よくもまあ、毒を吸うもんだね」
倫太郎は立ち上がり窓を開けた。
わざとらしく咳き込みながら、また腰を据える。
「早死にするぞう」
「上等だ」
「またそんな皮肉を!」
手をパタパタと動かしながら倫太郎はため息をついた。
「....そんなもの吸うから曇っちゃうのさ」
「記憶の話か」
「自分で考えておくれ、センセ」
おお、ヤダヤダ。
イヤだねぇ、と言うと、倫太郎はくすくすと笑いながら部屋を出た。
本当に何をしに来たのか。
和夫は開けた窓から呆れつつ、小さくなっていく倫太郎の頭を見ていた。
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作者名:走尸行肉 | 作者ホームページ:http://genjitutouhi
作成日時:2019年1月20日 15時