【企画本編】終末戦記 -零- 【フレディ視点】 (ページ29)

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見つかってる。――殺される！！
でも、今更隠れたって。ぶわりと全身から汗が吹き出す。距離がつまっていく。二階建ての建物くらいの生き物と戦うなんて無理だ。終わりだ。
怖い、怖い、怖い怖い怖い怖い！！なんでこんな目に遭わなきゃいけないんだ！！

そう心の中で叫んだのも束の間、猛突進するライオンの頭が目の前に広がる。大きく口を開けて、鋭い牙をむき出しにして。
ぐっと目をつむり、とっさに右側に飛び込む。ガガガ、と引きずるような音が響き渡り、自分の体は建物の壁に大きくぶつかった。背中に大きな瓦礫が当たる。
早く起きなきゃ、という考えよりもすぐ先に、巨体は素早く方向転換し始めた。次、避けて、避けたらどうしたらいい。ギャーッ！と耳障りな叫び声が聞こえて、思わず耳を塞ぐ。わかりやすく迫り来る影。今度こそダメだ。もう、もうおしまいだ。

――バキンッ！！

次の瞬間、強いヒビ割れの音がした。
来ると思っていた衝撃が来ない。
目を開けて、顔を上げる。

「フ、」

名前を呼ぶよりも前に、突然体が宙に浮いた。力強く脇に固定され、その強さに思わずうめき声が漏れる。地面にヒビが入るほどの踏ん張りを見せた次の瞬間、勢いよく上昇する。ぐるぐると回る視界に酔いそうになりながら、すでに何度も縋った肉体にしがみついた。

商店街の屋根の上、天使よりも少し上の場所にフレディは降りる。降りるというより、ほとんど落ちて激突していたようだけれど、やっぱり人間よりは脆くないらしい。そのまま不安定な屋根の上にぼとりと落とされる。

「――なんなんだよテメエは！！ビビるのか戦うのかどっちかにしろ！！」
「……ご、ごめん、なさい」

助けられたんだろうか。多分、フレディにそんな意図はないと思う。でも、助かったのは事実だった。

「謝れば気が済むとでも思ってんのかッ！！」
「ッ……」

叫び声に体がすくむ。

「オレサマは今最高潮にイライラしてんだよォ……！」

ビクッと体が震えた。
なんで。なんで、今更。
あざ笑う同級生の顔がフラッシュバック――しなかった。