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次の瞬間。
ひょい、と軽々と悪魔の体が持ち上がる。何が、と思って顔を上げた先には、鬼の形相でこちらをにらみつけるフレディの姿があった。首根っこを掴まれたのか、ダチュラと呼ばれた悪魔は「やめて！ 汚い！ 触らないで！」と暴れている。
フレディはそんな彼女を当然のように放り投げる。隣の――もはや何の店舗だったのか分からない建物に投げ込まれた。ガラスの割れる甲高い音が響き渡り、思わず目をつむる。
「いっったーーーーーーーーーーーぁあああい！！」
「うるせえ！！ 許可なく他人のモンに手ぇ出すんじゃねえ！！」
「最低！！！ クズ！！ ゴミ！！ ダチュラになんてことするのぉ！！！」
「知るか！！！ ダチュラって何だよ！！！」
どう考えても人の名前だと思う。そう言おうとして、ふと先程までそこにいたはずの契約者がいなくなっていることに気づく。振り返れば、瓦礫に埋もれる悪魔に手を差し伸べているところだった。
「ダチュラ、ダチュラ……！ 大丈夫……じゃ、ないよね、僕はどうしたらいい？」
「嫌ッ！ みないで、私のかわいい顔が！！ こんなの私じゃないっ！ ダチュラじゃないの！！」
「そ、そんな……そんな悲しいこと、言わないでくれよ。どんな君も僕にとっては――」
ホコリや煙が立ち込めていて、二人の姿ははっきりとは確認できない。会話から察するに、フレディが投げ込んだ悪魔は無事じゃすまなかったんだろう。
「フレディ、今のはさすがにひどい――」
「あﾞぁﾞ？」
「――と、思います……」
ジロリ。赤い瞳がこちらを睨みつけ、また怒りに顔を歪めている。
「てめえが勝手にいなくなったんだろうがッ！！」
「……だ、だからって、知らない人に八つ当たりするのも良くないと思う……」
「人じゃねえ悪魔だ！！」
「さ……」
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