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「申し訳ございません、アナタがこの辺りを興味深そうに見ていたものですから。何か気になるものでも？」
「あ、え、えっと……ここ、どこかなーって思って……」
いつもの癖で、なんとなく適当な返事をしてしまう。
「ここ、ですか。申し訳ありません、ワタシここに来るのは初めてなので中まで案内することはできないんです」
「は、はあ……」
もっと聞きたいことはある。なんで名前知ってるのかとか、多分悪魔なんだよねとか、あるはずなんだけど。
「そういえば自己紹介がまだでしたね。改めまして、メレディスと申します。アナタのことは彼から伺っています」
「か、彼？」
ちらりと、切れ長の青い瞳が左を向く。思わず合わせて顔をそちらに向けると――
「――ゼットさん！？」
「……ねえ、それわざと？」
「ええ。全力でボロボロにされているアナタも珍しいですし、ぜひ奥宮さんにも見ていただきたく」
「絶対嘘じゃん。……今そういうやり取りする余裕もないんだって」
青白い顔に、一筋汗を浮かべたゼットさんが座り込んでいた。座り込んでいた、というよりは足を折り曲げてへたれこんでいるという方が正しいかもしれない。長い脚から血が出ていたり、大きな外傷は見当たらないものの、明らかに不調だということはわかる。
「しかしまあ……フフ、どれだけ無茶な戦い方をしたのです？ ワタシの契約者でも、あんな状態になったことはないのですが」
「あー……まあ、たしかにそこは予想外だったかもね。最初のうちならさらっとカバーできると思ってたんだけど」
メレディスと名乗った悪魔は横目でどこかを見る。また見ようとして、「やめときなよ」とゼットさんの声が重なった。
「君もひどかったけど、彼らも散々だったよ。まだ治ってすらいない。見ないであげて」
「ッ……」
コンマ数秒遅かった。思わず後ずさる。自分が見たものを否定しようとするのはこれで何回目だろう。目をつぶって、大きく首を横に振る。
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