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「にぎぎ……っ!」
「あ、ありがとう……!」
ごわごわでふかふかの毛をつかんだまま、震源地の方に視線を向ける。
「な、何、今の……」
辺りを見回す。空に浮かぶ雲の間から、煌々と輝く光が見えた。ただ日が差しているだけにしては、やけにはっきりしている。光り輝く道のような、階段のような。もう少しよく見えたら良かったのだけど、いかんせんこちらからは遠すぎた。
その中で、一つ。黒い影が降りていく。形は……はっきり見えない。気がつけば同じ光がいくつも雲の間から差し込んで、同じような影が空から降りてくる。いや、もう落ちてくると言ったほうがいいかもしれない。光が一つ、通学路の途中の公園へ降り注ぐ。
次の瞬間、耳を劈く悲鳴のような、雄叫びがこだました。
「……な」
何、あれ。
「カナデちゃん!」
「……ッ!!」
シエラにその身を預ける。彼女が私の体を抱きとめ、地面を蹴り上げ距離を取った。私がいた場所には、大きな傷跡が残される。これは、爪のあとだろうか。
逃げる方向とは反対を向く自分の体。シエラにしがみついて前を向く。
「――ォォォォオオオオオ!!」
「ッ――さすがに、登場が早くないかな!!」
こちらに逃げ場はないぞと言わんばかりに、大きな咆哮が響き渡る。ライオンの頭は白目を向いていても、明らかにターゲットを定めていた。
「……あ、ぁぁああああれ、まさか、天使!?」
「そうだね! このタイミングで来るのはちょっと予想外だったけどッ!」
前脚が振り下ろされる。指先には一つ一つ、丁寧に研いだような鋭い爪がついていた。道路のコンクリートも、その下の土さえもえぐってみせる。あれに当たればただでは済まない。真っ赤な瞳があちこちをぐるぐる見回った後、全員が同じ方向に向かって視線を集める。その先は――
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