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「……うん、大丈夫。覚悟はできた」
「へえ。覚悟ねえ……」
「ゼットさん、うるさい」
「まだ一言しか話してないのに?」
「奥宮……」
「……気にしないで。分かりきってた事だもん」
ガーナくんの後ろで不機嫌そうに座りこむシエラに近づく。
「……さっきのは、さすがにちょっと傷ついたなあ」
「ごめんね」
頬を膨らませながら、シエラちゃんはつん、とそっぽを向く。
「……ねえ。シエラちゃんは私と契約するんだよね?」
「……」
「私、シエラちゃんに何を渡せばいいのかな」
「……!」
シエラが勢いよく振り返る。ちょうど羽が当たったのか、「フミャッ」とマヌケな鳴き声が聞こえた。
私の顔をみたシエラは、またちょっとだけ目を丸くしたあと、小さくにししと笑って見せる。
「……そうだなあ。じゃあこうしよう」
刹那、私とシエラを星空の翼が包み込む。
「ボクがキミに要求するのは、キミにとっての”大切なもの”」
「……結構ざっくりしてるね?」
「にししっ! こういう方が何かと都合がいいからね」
都合? きょとんとする私に、シエラは「知らなくてもいいことさ」と答えを言おうとはしなかった。
多分これ以上聞いても答えは返ってこないのだろう。
「カナデ。君は変わることを望んだ。ならば、ボクも変わりたいと願う君に”変える”力を与えよう」
微妙にニュアンスが違うような気がする。まあ、多分そんなことを聞いたところでどうにもならない。
「……分かった」
「にしし、契約は成立だね!
”奥宮カナデ”! 君に素敵な贈り物を!」
辺りが光に包み込まれる。夜空にきらめく星のような、暗闇を照らす淡い光。シエラの足元に何かが浮かんだと思えば、私の体を包み込んでいく。人肌くらいに温かいような、どこか氷のように冷たいような。
「一緒に天使を殲滅しよう!」
「……うん。そうだね」
抱きしめられるような感覚。こうやって誰かと触れ合うのは久しぶりだ。
私の頭の中でシエラちゃんの声が聞こえる。心の奥底の、深いところに触れ合っているはずなのに、どこか遠い場所にいるような気がした。
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