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ページ24

「……うん、大丈夫。覚悟はできた」

「へえ。覚悟ねえ……」
「ゼットさん、うるさい」
「まだ一言しか話してないのに?」

「奥宮……」
「……気にしないで。分かりきってた事だもん」

ガーナくんの後ろで不機嫌そうに座りこむシエラに近づく。

「……さっきのは、さすがにちょっと傷ついたなあ」
「ごめんね」

頬を膨らませながら、シエラちゃんはつん、とそっぽを向く。

「……ねえ。シエラちゃんは私と契約するんだよね?」
「……」
「私、シエラちゃんに何を渡せばいいのかな」
「……!」

シエラが勢いよく振り返る。ちょうど羽が当たったのか、「フミャッ」とマヌケな鳴き声が聞こえた。
私の顔をみたシエラは、またちょっとだけ目を丸くしたあと、小さくにししと笑って見せる。

「……そうだなあ。じゃあこうしよう」

刹那、私とシエラを星空の翼が包み込む。

「ボクがキミに要求するのは、キミにとっての”大切なもの”」
「……結構ざっくりしてるね?」
「にししっ! こういう方が何かと都合がいいからね」

都合? きょとんとする私に、シエラは「知らなくてもいいことさ」と答えを言おうとはしなかった。
多分これ以上聞いても答えは返ってこないのだろう。

「カナデ。君は変わることを望んだ。ならば、ボクも変わりたいと願う君に”変える”力を与えよう」

微妙にニュアンスが違うような気がする。まあ、多分そんなことを聞いたところでどうにもならない。

「……分かった」
「にしし、契約は成立だね!
”奥宮カナデ”! 君に素敵な贈り物を!」

辺りが光に包み込まれる。夜空にきらめく星のような、暗闇を照らす淡い光。シエラの足元に何かが浮かんだと思えば、私の体を包み込んでいく。人肌くらいに温かいような、どこか氷のように冷たいような。

「一緒に天使を殲滅しよう!」
「……うん。そうだね」

抱きしめられるような感覚。こうやって誰かと触れ合うのは久しぶりだ。
私の頭の中でシエラちゃんの声が聞こえる。心の奥底の、深いところに触れ合っているはずなのに、どこか遠い場所にいるような気がした。

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設定タグ:終末戦記   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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作者名:元素 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2022年8月6日 23時

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