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「どこへ行くんだい?」
「……」
「今の状態のキミを置いてくなんて、ボクは心配だな」
微笑むシエラに、私は。
乾いた音が響く。気づけば彼女の細い手を振りほどいていた。
「……ごめん。ちょっとだけ、一人にしてほしいな」
「――!」
目を丸くするシエラにそういうのが精一杯だった。倒れていた廊下の荷物を蹴り飛ばし、そのまま自分の部屋へ進んでいた。
天井から床にかけて、足を踏み外して落っこちても仕方ないくらい、大きな穴が空いている。
私の頭は急激に冷めていく。
そうだ。そうだよ。
なんでこんな事になってるの。
どうして、何もかもが、おかしくなってしまったの?
なぜ、私達の全ては奪われた?
探さなきゃ。生き返って、変わるって決めたんだから。
自分に素直に生きるって決めたんだから。
クローゼットの中で、無事に残っているジャケットをひったくる。あと必要なものはなんだろう。……この手記だけでいいか。
私は天使を殺すために、この世界で生きてるわけじゃない。今を知るために戻ったんだ。それなら契約なんて必要ないけれど、今の私じゃ、変われたとしても弱すぎる。
何よりその気持ちを聞いて契約してきたのはシエラの方だ。私は悪くない。私のこの決意が、仮に誰かを裏切るものだったとしても私は何も悪くない。不満を言われたなら言い返せばいい。嫌だと思ったのならそう伝えられればいい。
出かける準備はできた。お母さんとお父さんの血がついた靴下は、不快だけれどそれでいい。階段を降りる音がして、廊下にいたカノンちゃんがこちらに気がつく。
「……奥宮さん、大丈夫?」
にっこりと微笑んで問いかけてくる。
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