ドSの王子様 special 《川村壱馬》

離れない ページ17

Aside





壱馬が来てくれた。



どんな顔して会えばいいか分からなくてここにいたのに、今は後ろにいるの。



しかも第一声がなんでお前が泣いてんだよって。



壱馬らしくて安心して、さらに涙が出た。



自分が一番辛いはずなのに、いつも通りに接してくれることが嬉しくて。






涙が止まらないまま振り返ると、壱馬は一瞬驚いた表情になって、そのまま涙が一筋、壱馬の頬を流れた。



.....そんなに思い詰めてたんだね。



気づいてあげられなくてごめんね。



私がもっと根気強く話せばよかった。



1人にしてって言われても、ずっと一緒にいればよかった。





「.....ごめん....ねっ」





そう言った瞬間、壱馬は私の元へと歩み寄り、そのまま抱きしめた。





「壱、馬.....？」



壱『.....お前が謝る必要ない』



「えっ.....？」



壱『全部、俺のせいだから。 自分のことしか考えられなかった、俺のせい。』






そんな風に思ってたの...？



違うよ、私だって、壱馬のことなにも知らなかった、助けてあげられなかった、支えてあげられなかった



これじゃ、彼女失格だよ....





壱『俺まだガキなんだよ。 お前のこと分かってるフリして全然分かってない。 結局は自分が弱いから、心配かけたくなくて、離れてくんじゃないかって思って、なにも言えなかった。』









「....離れないよ。」






私は無意識にそう答えてた。



紛れもない、そして、汚れのない、私の本心。






「私は離れないから。 たくさん心配かけてよ、その分支えるし、助けたい。 いつも支えてもらってるから、私だって壱馬のこと支えたいよ。」





壱『...ごめっ.... A...っ』







壱馬は、泣いていた。



私の肩を濡らしながら、静かに泣いていた。






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