ドSの王子様 special 《川村壱馬》

想いは増すばかり ページ16

壱馬side





壱『どこにいんだよ.....』





無駄に広いこの屋敷。



1周するのも一苦労。



こういう時に不便だわ、家広いと。




通りがかりのメイドにも聞いたけど、みんな知らないって。



まさか、この屋敷から出たとかねえよな。



そんな予感が頭によぎると、近くですすり泣く声が聞こえた。







この声.... A？



俺は引き寄せられるようにその声の方へと足を運んだ。








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角を曲がると、そこには俺に背を向ける方向に座り込んでいるAがいた。




「ごめん....壱馬.... なにもできなくて。 困ってるのに....ごめんね...」




それを聞いた瞬間、声をかけようとしたがかけれなくなった。




違う。 お前のせいじゃない。



全部全部、俺のせいなんだ。



俺が言わなかったから、弱かったから



Aが離れていくかもしれないって思ったから言えなかったんだ。





悔しさと、自分への怒りが増す。


俺はなぜか、スっと角から出て、声を出していた。




壱『...なんでお前がそんなに泣いてんだよ』




こんな声掛けしかできない俺を、Aはどう思うだろうか。



呆れる？ 嫌いになる？



お前のせいだって怒る？






だけど、Aは肩をビクッと揺らして、涙目でこっちを見て、優しく俺の名前を呼んだんだ。



こんなに俺の事を想ってくれてる、俺なんかの事で泣いている、俺の顔みて安心してる



そんなAを見て、俺の頬には一筋の涙が伝った。








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