Emotion3

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駅のホームで紫耀が私を抱きしめて
紫耀の匂いがいっぱいに広がった。

「餞別を考えてみたの。」

そっと紫耀の背中に腕を回した。
紫耀はより一層強く私を抱きしめてくれた。

「だけど渡す物なんて
何にも思いつかなかった。許して」

紫「モノなんていらん」

「けど言葉は消えちゃう」

紫「じゃあお前の答えは何？」

「コレ。」

髪の毛を耳にかけて
自分で耳朶を触って紫耀に見せた。

紫「開けたん？」

「左だけね。紫耀とおんなじ。」

少し慣れない左耳のピアスホールは
まだ全然むず痒い。


「私の中から一生紫耀は消えない。
ピアスをつけるたびに貴方を思い出して
罪悪感にかられて虚しくなるの。
少しは紫耀への罪滅ぼしになるでしょ？」

紫「......罪滅ぼしなあ。」

紫耀は呆れたように笑ってから
自分の左耳についていた
星型のピアスを外して私に渡した。


紫「もっとけ」

「いいの？」

紫「俺からAへの餞別」

「.......ありがとう大切にするね」

貴方のことを忘れない。
何だか今なら自信を持って言える気がした。


「紫耀、 貴方が好きだった。」

呆気なかった。
昨日あれ程我慢した言葉が、いざ別れの瞬間
となるとこうもスラスラと出てくる。

紫「.....愛なんて一瞬なんやって。
今更、もう遅い。阿保。」

「うん。わかってる。
だけど全部終わる今だから言えるの。
紫耀、貴方のこと愛してる。」

紫「.....遅すぎる。遅すぎや。
ずっと、俺はそう言って欲しかった。
お前の一番になりたかったんや。」

「........一番だったよ。
嬉しいことは一番に報告したかった。
嫌なことは一番に愚痴りたかった。
それに紫耀の笑った顔が一番好きだったよ。」

だけど私は決して貴方にそれを伝えなかった。
伝えられなかったんだよ。
結局私は自分が傷つくのが嫌だったから。


紫「ずるい。なんで今なん。」

「うん。ずるいの私。
だけど最後だから、好きなように言わせてね。」

新幹線はもうホームに到着していた。
これで本当に最後。


「グッバイ！元気で！平野紫耀！
こんなに最低で最高な人生、貴方とじゃなきゃ
過ごせなかったよ！感謝してる！バイバイ！」


紫耀より先に手を離すのは私と決めていた。

新幹線に乗り込んでから
窓の向こうに見つけた紫耀は
必死に私の名前を叫んでいた。
どんなに強がってもやっぱり
私達は子供だったんだと思った。

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