148 ページ49
.
約束をしようと言ったのは俺やった。
ここ最近のAはすごく辛そうだった。
最後くらい、Aの辛い顔を見たくなかった。
それに終わるとわかっていて
自分の想いなんて伝えたって意味なんてない。
紫「すき」
Aは暫くして泣き始めた。
俺の前では泣かないと
あんなに意地を張っていたAが
最後の最後に俺に弱さを見せた。
だから思わず口走ってしまった。
しまったと思った。だけど止まらなかった。
紫「愛してる、Aは？」
その時の俺はもう罪悪感でいっぱいだった。
別にわかっていた。
Aが俺の気持ちに応えることはないなんてこと。
だけどどうしても伝えたかった。
「言葉は消えるものだね」
彼女がいつかそんなことを言っていたのを思い出してああ、なるほどなと思った。
いくら好きだの、愛してるだのそんな言葉を
並べたって形として何一つ残ることはないんやなあとあの時実感した。
ずるい奴だった。
これから愛し合おうって時に
「初めから嫌いだったの」なんて言うんやで？
それはもう下手くそな嘘やったけど。
嘘はつくし、せやけど泣くし。
強がるんか甘えるんかどっちかにせえと思ったな。
何回も何回も求め合った。
果たしてそこに愛はあったのやろうか。
聞けなかったな。あんなに泣いてるんやもん。
だからそれは一生わからんことになるわけや。
勝手な女やろ。
全部終わった時Aはピクリとも動かなかった。
俺にも余裕がなかったからそれは許してほしい。
何も喋らんの。最後なのに。
いつのまにか夜が明けてたから驚いたわ。
その割に朝起きたらあっけらかんやった。
「グッドモーニング。いい夢みれた？」
こいつ正気かと思ったなあ。
もっとこう「今日でお別れだね」とか
「離れたくない」とかないのかよと思ったな。
だけど、らしかったっちゃらしかったのかもしれん。
俺はもう何一つ頭が回らんかったな。
これからAは夕方の新幹線に乗って
東京へ行くんやから。
俺は気が気じゃなかったのにAは以外と冷めてたな。
今も何にも考えられてへん。
「バイクで送ってよ」
確か、そんなことを言われたんやと思う。
だから今ここにいるんやと思う。
.
「紫耀。」
すごく綺麗になったなと思った。
俺が初めて会った時よりはるかに綺麗だ。
「A」
気付いたら駅のホームで抱きしめていた。
どうしようもできない気持ちが先走っていた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1629人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「永瀬廉」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぴ(プロフ) - やばいヤツですね。見つけてしまったこのかなんとも言えな感覚は久しぶりで嬉しいです。深くて深くてまるで溺れるナイフの進化版を読んでいるようです。ラストスパート頑張って下さい。楽しみにしています。 (2017年7月20日 1時) (
レス) id: 4eec252e97 (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - 更新楽しみに待ってます！占ツクで一番好きな作品です！ (2017年6月28日 23時) (レス) id: 0e9f8935cb (このIDを非表示/違反報告)
りあ(プロフ) - 更新楽しみに待ってました！2人が思い合っているのに2人の関係性に読んでいて切なく泣きそうになります。紫耀くん、廉くんどちらとも結ばれて欲しいのが本音ですが、最後にどちらを選ぶのか凄く気になります！大好きな作品なので時間がある時に何回も読み返してます^^ (2017年5月17日 1時) (レス) id: 90116ced49 (このIDを非表示/違反報告)
ちさと(プロフ) - はじめまして。この作品の1つ目はありますか？素敵な作品なので読みたいです！宜しくお願い致します。 (2017年4月23日 10時) (レス) id: 87b7aec49a (このIDを非表示/違反報告)
せなー(プロフ) - 初コメ失礼致します。久しぶりに好きな作風の作品に出会い、更新分まで読ませていただきました。離れなければいけない恋、なんとも切なくて素敵です。これからも更新頑張ってください。 (2017年4月6日 16時) (レス) id: 3c581ac854 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ふる
| 作者ホームページ：http://twitter.com/ei_njo
作成日時：2017年4月3日 20時
