Emotion3

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「あ、いい匂い」

紫「食べる？」

「自分で、買うから。」

紫「俺も食べたいから」

いい匂いなんて無意識に呟いた言葉に後悔。
なんの躊躇もなく紫耀は財布を開く。

「......ありがとう」

紫「ん、俺にもちょっとわけてや」

私が手に持ったケバブにがぶりと喰らえつく。
そんなに食べるなら自分の分も買えば良かったのに。


紫「大吾、今頃らぶらぶしてんのやろな」

「私は2人にくっついてほしいと思うよ」

紫「そうやな。あいつら夫婦みたいやと思わん？」

「わかる！西畑くんは将来絶対尻に敷かれるよね！」

話に盛り上がって無意識に紫耀の方を向くと
紫耀は楽しそうに笑っていた。
決まり悪くて私は思わず下を向く。


紫「もうそろそろあがるんかな、花火」

「私、なんで紫耀と見るんだろう」

紫「細かいことはええやん別に。」

細かいことはええやん
なんて、そこが大切なんじゃん。
だけど......まあ、良いか。
別に、付き合ってるとか別れたとか
好きだとか嫌いだとか。
そういうのは全部取っ払って、
ただ漠然と人と花火を見るということにすれば。

そして全部終わったら
今日のことはなかったことにすればいいか。
私は本当に懲りない阿呆女だ。


紫「タイミングが合わなかったんかな」

「私と紫耀？」

紫「だってさ、そう思わん？」

そう、思う。
ひたすらそう思ってる、ずっとそう思ってた。
私に恋人がいなくて、紫耀と出会って。
普通に恋に落ちて、普通に恋愛したかった。
紫耀のことずっと愛してあげたかった。


「思わない。だってそれも運命だもん。
そーゆう運命だったんだよ....きっと。」

紫「なら、俺は運命を変えたい」

「ダメ。運命を変えるのは
2人の中で禁断の行為なんだから」


一番愛してる人とは結ばれることはない
運命に逆らうことは神に背く行為であり
もしそのようなことがあれば
必ず天罰が下る。

あの本の中で神様はそう言っていた。
男は結ばれてはいけない女に恋をした。
神からその言葉を告げられた男は、
「ならば運命を変えてやる」と女を連れて街を出た。

結局、2人は結ばれることはなかった。
脚注に描写はなかったけれど
おそらく男は死んだのだろうと思った。


あの物語は曖昧なまま終わる。


「紫耀が考えたあの本の続き、すごく素敵だったよ。」

最後のページに挟まれたメモ。
紫耀の汚い字で文章がずらりと並んだもの。

思い出した瞬間、胸が熱くなった。
いつの間にか夜空には大きな花が咲いていた。

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