124 ページ25
.
暑いのは嫌いだ。
夏はすぐに私の元へやってきた。
舞「去年はA東京行ってたやん。
ええやん、良い息抜きになると思うで。」
「うーん、わかった。」
今日の夜、舞美に誘われた花火大会。
花火大会なんて、いつぶりだろう。
去年は........そう、行ってないんだった。
封じ込めていた記憶が些細なことで
こうやって蘇ることは多々あった。
けれど、廉がここに来たあの日以来
不思議な事にパタリと悩むことはなくなった。
舞「平野、呼ぶ？」
「やめて」
それは多分、
私の決意が決定的になったからだろう。
廉が来たあの日、私には急に焦りが生まれた。
私はある意味、廉に忠告されたのだと思った。
“ 俺にはなんでもお見通し ”
そう言われているような気がした。
舞美との電話を切って
ベットにゴロンと横になれば、
何故だか今日に限って
ベットサイドテーブルに目がいく。
ああ、これか。この本か。
借りっぱなしのこの本。
そういえば読めないからと言って
最後まで目を通すこともしなかった。
何気なくパラパラとめくって文章を目で辿る。
そして私は思わず目を丸くした。
『Aー？浴衣出したけどー？』
下から聞こえる母親の声もうるさいくらいに鳴く蝉の鳴き声も何も聞こえなくて
ただ呆然と部屋の時計の針だけが音を鳴らした。
.
舞「あんた流石やな。」
可愛すぎると私をべた褒めする舞美。
舞美だってすごく綺麗なのに。
「どのくらいの規模なの？花火って。」
舞「そうやなあ。まあ、ここら辺の人は
みんな来るようなやつ。しょうもないやつではないな。」
へえ、そうなんだ。
私から質問したのに、興味も湧かなかった。
舞「A、なんかぼーっとしとる。熱でもあるん？」
「あ、いや違うの。」
体調が悪いわけではない。
きまりが悪いのだ。
どうして今日に限り
あんなものを見てしまったのだろう。
そして今日は
神様はとことん私に意地悪をする。
舞「あ、大吾や。」
舞美の駆け出したその先に
今、一番思い出したくない人がいるんだから。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1629人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「永瀬廉」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぴ(プロフ) - やばいヤツですね。見つけてしまったこのかなんとも言えな感覚は久しぶりで嬉しいです。深くて深くてまるで溺れるナイフの進化版を読んでいるようです。ラストスパート頑張って下さい。楽しみにしています。 (2017年7月20日 1時) (
レス) id: 4eec252e97 (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - 更新楽しみに待ってます！占ツクで一番好きな作品です！ (2017年6月28日 23時) (レス) id: 0e9f8935cb (このIDを非表示/違反報告)
りあ(プロフ) - 更新楽しみに待ってました！2人が思い合っているのに2人の関係性に読んでいて切なく泣きそうになります。紫耀くん、廉くんどちらとも結ばれて欲しいのが本音ですが、最後にどちらを選ぶのか凄く気になります！大好きな作品なので時間がある時に何回も読み返してます^^ (2017年5月17日 1時) (レス) id: 90116ced49 (このIDを非表示/違反報告)
ちさと(プロフ) - はじめまして。この作品の1つ目はありますか？素敵な作品なので読みたいです！宜しくお願い致します。 (2017年4月23日 10時) (レス) id: 87b7aec49a (このIDを非表示/違反報告)
せなー(プロフ) - 初コメ失礼致します。久しぶりに好きな作風の作品に出会い、更新分まで読ませていただきました。離れなければいけない恋、なんとも切なくて素敵です。これからも更新頑張ってください。 (2017年4月6日 16時) (レス) id: 3c581ac854 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ふる
| 作者ホームページ：http://twitter.com/ei_njo
作成日時：2017年4月3日 20時
