君と、恋の話がしたい。II (ページ4)

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俺はただの凡人だった。
馬鹿で阿保で単純だからそれに気づいたのは本当につい最近だ。
親から授けてもらった何不自由ない容姿に、ここにくるまでの十分な環境まで揃えてもらった。
俺の力ではなく、それは全て親の力。

だからいざ、自身の力で何かを成し遂げようとかどうにかしようと思ったって何もかもわからなかった。

人よりも遅く事情を知ってその事情にどんな太刀打ちができるかもわからない。
それは、俺が何不自由なく生きてきた事が直接的に関係しているわけでもないけれど全てのことに関して俺はそういう奴なんだ。

何もできない、してあげられない。
平野紫耀はそう言った。
どうしようもなく無力だと自分を責めていた。
もう手を引くとも言っていた。
俺なんかよりずっと頭が良くて、きっと彼女の事だけを考えて生きてきた彼奴がだ。

それなら俺はどうしたらいいだろう。
あの悲劇に立ち会った身として全責任をとり彼女の側にいればいいんだろうか。
将又、彼女と永遠距離をとって全責任を放棄して一生この痛みを背負いながら生きていけばいいのだろうか。

後者は違う。
けどだからといって前者が正しいとも思えない。

だって知らなかったんだ。
そんな覚悟が必要だなんて事。
彼女が抱えているもの、秘密にしていたそれを何も知らなかった。
俺だって元々それを理解していたのなら、それら全ての事に配慮したものを彼女に提案していたはずだ。

ああ、嫌だな。
こうやって責任を逃れようとする自分が。
嫌なのに、そればっかりだった。
要因は紛れもなく目を覚まさない彼女にあった。
あの日からもう一週間経った。