君と、恋の話がしたい。II (ページ2)

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彼女のヒーローになんてなれない。

それは誰より俺自身が一番わかっていた。
けどきっと誰より自惚れていたのも確かに俺だったな。
それに関しては、AもAで悪いところがあったはすだ。
例えば、キスをしたあの後何事もなかったように俺の高校に進学してくれた事だって、いつか俺がプレゼントした髪飾りを毎日欠かさず付けている事だって、俺だけに向けられる特別な表情がある事だって。
「紫耀くんが居てくれて良かった」だとか「紫耀くんは本当にカッコいいね」とか彼女がかけてくれたそんな言葉達だって全部、思わせぶりだ。狡い。

彼女の願いを叶えてあげたかった。
どうしようもなく健気な願い。

JKになりたい。

頼みごとなら何でも言えと言っていたのに、彼女が望んだことは結局これだけだった。
でもそこにきっと色んな感情が含まれていたのだと思う。
他の皆んなと同じように生活して、同じように授業を受けて、偶にさぼったりして先生に怒られたり。
そんなごく普通の平凡な幸せが彼女にとったら特別望んでいたものだったんだと思う。
その為に俺は色々な事を気にかけた。
先生達には人一倍気にかけてやってほしい、けれど病気のことは誰にも秘密にしてほしいと取り合った。不自由のないように、けれど特別な扱いはしないでやってほしいと難しい頼みごともした。
先生達は俺が出来のいい病院の息子だと思っていたからかおかしな俺の頼みごとも全部受け入れてくれた。
彼女の望みの為に自分の力を全部尽くした。

けれど、ただ一つ「好きな人ができた」その話があがった時、俺はまた適当に誤魔化したんだ。
それは彼女の為にではなくてきっと俺の為に。

JKになりたいという願いの中に、誰かと恋がしたいとそういう類のものが含まれていたのなら叶えてやらなくちゃいけない筈だ。だけどそれは、俺が一番恐れていた願い事でもあったから。

彼女が病院に運ばれる事を父親経由で知った。
誤魔化したからいけなかったのか、それともハナからそうなる運命だったのかそれはわからないけれど。

けど認めたくない程にわかることならあった。
彼女が運ばれたその時、隣にいたのは俺じゃなかったんだ。

其奴が、彼女が望んで選んだ相手だったんだ。

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