ページ4
「うふふふ、懐かしいやろ」
その晃一の鼻には、大きくて真っ赤な丸が付いていた。
『あの時の、ピエロ?』
「そう!羽奈ちゃんが元気ない時にだけ現れるピエロやで」
『え?』
「晃一くんが、あーあ、羽奈ちゃんに元気出して欲しいなぁって思た時に、その声が届いて現れてくれんねん」
『ふふ、何それ。笑』
晃一は自分の鼻から赤丸を取り、それを羽奈の鼻にくっ付けた。
「ふはっ、可愛い」
こーちゃんの笑顔は、いつ見ても元気が出る。
「大丈夫。俺がついてるからな」
頰を包み込んだその手は、大きくて温かかった。
晃一はゆっくり顔を近づけていく。
これから何が起こるのか、羽奈は勘付いて思わず目を閉じた。
「あっ!」
という声と共に、遠ざかった気配。
ふと目を開けると、ニヤッと笑った晃一の顔。そして、その顔の下から伸びて来た手が、鼻に付いていた赤丸を取った。
と、同時に、視界から晃一の顔が消え、唇に違和感と温かみを感じた。
一瞬だった。
目を閉じる暇もないほどに。
68人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:0号車さん | 作成日時:2017年6月21日 16時