最後の木曜日 ページ37
.
開いたドアの向こう側にいる川村くん｡
ちょっとびっくりしてる。
そりゃびっくりするよね。
だって、ドアを開けたら人が立ってるし、おまけに泣いてるし。
『.....ご、めん』
壱馬「いや、うん」
動揺して、二人の間に変な空気が流れる。
この空気は居心地が悪い。
ずっとドアの前で二人して固まってたら、たまたま廊下を通った先生に声かけられて我に帰った。
カウンターに座ると、川村くんは何もなかったかのようにいつもみたいに本を読み始めた｡
あれ？
川村くん、どこかに行くからドアを開けたんじゃ.....
それを私が遮ってしまったなら、申し訳ない｡
そう思って声をかけた｡
『あの、川村くんっ』
壱馬「ん？」
『さっきどこかに行こうとしてたんじゃないの？』
壱馬「あぁ(笑)あれは佐藤が遅いなぁって思って見に行こうとしてた」
『そ、そっか！ごめんね』
壱馬「ええよ、謝らんくても(笑)」
それだけ言ってまた川村くんの視線は本の文字｡
何でかな｡最後の２日間なのに、川村くんが素っ気ない気がする。
別に、私ごときに川村くんがいちいち気にかけてくれることもおこがましいんだけど。
なんか寂しいなぁ。
って、思っちゃった｡
.
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿ "バサッ "
いきなり少し大きな音がなったから、思わず肩が上がった。
音の正体は、川村くんが本を落とした音。
拾ってかがんだ体を起こすと、川村くんの手が私の手首に伸びて掴んだ。
想定外のことに驚いて、また本が音をたてて落ちてしまった｡
『あっ、』
壱馬「しー.....」
声を出した瞬間、川村くんが手のひらを私の唇に当てた。
壱馬「図書室では、静かにするんやろ？」
そう言って、口元と手首から離れた川村くんの手のひら｡
その手のひらを見た川村くんは、
壱馬「.....グロスついた」
そう呟いた。
謝ろうと思って口を開きかけたのに、川村くんが言葉を遮る。
壱馬「最近の佐藤、」
『......』
壱馬「なんか変わったな」
『.....っ』
壱馬「俺は前の佐藤のほうが好きやけど」
川村くんに言われると、なんかすごく傷つく｡
それに、前のほうが"好き"って、どういう意味の"好き"？
川村くんは「そろそろ帰ろうか」って、鍵を持って立ち上がってる。
私もつられるように立ち上がる。
最後の木曜日は、
悲しくて、
ドキドキして、
また悲しかった｡
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 628人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぴーゆい(プロフ) - アノアノさん» ありがとうございます！実は放課後図書室を参考にしているんです(^_^) (2020年8月8日 19時) (
レス) id: 0d1949d838 (このIDを非表示/違反報告)
アノアノ(プロフ) - 放課後図書室みたい！ドキドキします！ (2020年6月6日 23時) (レス) id: 1723452b39 (このIDを非表示/違反報告)
ぴーゆい(プロフ) - せえさん» でもまだあと金曜日がありますからね！更新頑張ります！！ (2019年4月26日 19時) (レス) id: ce51d072e7 (このIDを非表示/違反報告)
せえ - ヤーバイ！！最後の二日間辛いですよ！でもドキドキします！これから楽しみです！ (2019年4月26日 1時) (レス) id: 9ec98cd98a (このIDを非表示/違反報告)
ぴーゆい(プロフ) - ここなさん» よし、頑張ります！ (2019年4月17日 23時) (レス) id: ce51d072e7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぴーゆい | 作者ホームページ：http://twitter.com/@__Love_Symphony
作成日時：2019年1月3日 16時
