No.001 日常 ページ1
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「ゲン、起きて」
朝、Aの声で目覚める
目を開けると至近距離で俺を見つめているAのガラス玉のような瞳が、ボロいカーテンの穴から入ってくる朝日を反射してキラキラと光っていた
「……なんだ」
「起こしてごめんね」
申し訳なさそうな顔をして謝るAに向かって手を伸ばし、大丈夫だと言い聞かせるようにその綺麗な髪を優しく撫でてやると、Aは嬉しそうに俺に抱きついてきた
Aが嬉しそうにしているのを見ると、俺も柄にもなく嬉しくなってしまって、あくびをしながらふと笑みが溢れる
サブとバラに言わせれば、俺は寝起きがものすごく悪いらしいが、Aはきっとそうは思っていないだろう
「もう起きるのか？」
「今日は私が朝ごはん作りたいから」
「まだいいだろ。もう少し寝ろよ」
Aを腕の中に閉じ込めて、頭を撫でて、眠らせようと瞼を閉じさせても、もう寝ようとはしてくれない
たびたび朝ごはんを作りたがるのは、俺たちに必要とされていると感じたいからだとわかっていたが、そんなことをしなくても俺たちにはAが必要なのに
「ゲンはまだ寝てていいんだけど」
「お前が起こしたんだろ」
「それはごめん」
「何か用があんだろ？」
「あのね、足どけてくれないと私が起きられない」
「ああ……悪い」
眩しさに目を細めて、Aに言われるまま足を上げて反対側に下ろしたら、今度はサブの腹に下ろしたかかとが入ってしまったらしく、低いうめき声がきこえた
「サブ大丈夫？」
「……これゲンスルーだろ、クソ」
「もうさすがに4人は狭いね」
「まあな……」
慌てて俺から離れてサブに声をかけたAと、まだ半分眠っているような声のサブの会話が途中から聞こえなくなったのは、俺がまた眠りについたせいだった
少し体を動かしたら誰かにぶち当たってしまうほど狭い場所で身を寄せ合って眠るのは、襲われるのが怖いから
ひとりずつの部屋を借りないのは、単純に金が無いから
金の無い生活の中で、俺とサブとバラとAの4人は、おはようからおやすみまで、いつも一緒だった
今日食うものに困る日々も、4人でいれば幸せだった
朝起きれば時々Aが下手くそな朝食を用意してくれていて、狭い部屋で地べたに座ったままそれを食った
そういうアホみたいな毎日で良かった
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ライ(プロフ) - カナさん» こちらも読んでくださってたんですね！ありがとうございます。楽しんでいただけたみたいでとても嬉しいです！ (2020年9月28日 10時) (
レス) id: 182c279fa9 (このIDを非表示/違反報告)
カナ(プロフ) - 最期まで読みましたがとっっっても面白かったです！！！！ゲンスルーの作品中々ないので読めて幸せでした。もし続編があったら楽しみにしてます！改めて完結お疲れ様です！ (2020年9月28日 0時) (レス) id: 653b7cacce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ライ | 作成日時：2020年9月25日 10時
