たとえばここが、世界の果てでも３ (ページ10)

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帰り道で食事を済ませて、そのまま家に戻る。

夜のうちに、クローゼットの奥から軍から支給された退役軍人用の
軍服を出してきて、吊るしておく。

「これ、明日着る軍服ですか？」
「うん。」

壁際に吊るされた軍服を見て、Aが俺のところに寄って来る。

「すでに緊張してます。」

俺の方に視線を移すと、確かに笑顔なんだか引き攣ってんだかわからん
顔をしてこっちを見ている。

「へーきだわ。カッコが仰々しだけで、家族参加してる奴らも
たくさんいるし、サンタクロースも来るぞ？」
「そう、なんですか？」
「おん。」

なら、大丈夫ですかね、と自分に言い聞かせてるような口調で、
それでもこっちをじっと見ているから、

「なに。……誘ってんの？」
「いえ違いま、ん、」

じっくりと唇を食べてやる。

「ん、じゅぃさん、ぅ、」

じゅ、と舌を吸いながらゆっくりと離れると、Aの腰が
立たなくなっていた。

「明日、腰痛くてドレス着れなくなったらやべーから。今日は
お預けな？」

ゆっくり開いた瞳は、うっすら潤んでる。

思わず漏れた笑顔は、困ったような笑顔になっているのが自分でもわかった。

右手で目を隠してやりながら、「そんな目で見んな、」と告げた
声は、笑い声を含んでいるのが、自分でもわかった。