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シャツを着替えたら、階段を降りてダイニングに行く。
「Aはソファに座ってな。」
手伝おうとするAを押しとどめて、ほうきとちりとりを
持って掃除を始める。
割れた食器の破片と食事の残りが床に飛び散っていて、
テーブルの脇には、Aの血。
「うわ、結構出血したな。」
全部まとめてちりとりに入れながら、Aを見上げる。
「眩暈とかしねぇ？さっきここで倒れたの、立ち眩みだべ？」
これくらいの出血なら大丈夫だろう、とは思うけれど、そもそも
怪我をした原因は睡眠不足と貧血の立ち眩みだ。
「今のところ、大丈夫です、」
「眩暈したら、医者に行くぞ。」
「はい。」
床をきれいにした後、救急箱を持ってAのところに向かう。
「手、出して。」
差し出された右手の包帯をゆっくり取って、ガーゼを丁寧に
はがしていく。
傷が塞がりきっていなかったせいで、ガーゼは傷口にはりつく
ことはなかったけれど、出血は止まっていなくて。
「消毒して、薬塗るぞ？」
「はい。」
「沁みるからな？」
「はい、………いっ！」
「もうちょっと我慢して、」
「………ぁい…！」
だから、「ぁい」はやめろ、「ぁい」は。
丁寧に消毒液で傷口を拭き取って、ガーゼに傷薬を塗って。
新しい包帯を出して、手のひらに巻いていく。
「できた。」
「ありがとうございました、」
「今日はなんもすんな、傷口が塞がらねぇから。」
「わかりました、」
「しばらくの間、食事は恭平んトコ行くぞ。」
「はい。」
村の中心地で食事ができる酒場をやってるのが恭平の親で。
村に来てから時々通っていたおかげで、顔なじみになりつつあった。
「今日は、1日ゆっくりしような？」
小さい子をあやすような口調で、頭を撫でて。
素直に、はい、と答えたAを連れて寝室へ戻った。
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作者名：月華
| 作成日時：2023年5月15日 0時
