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男ふたり組が驚いた顔をしてこっちを振り返るのと同時に、
「樹さん、」
俺を見つけてぱっと笑顔になったAが、小走りで俺の
ところにやって来た。
自分たちの前を素通りされた男たちが、俺とAのことを
凝視してるのが目の端に映る。
「お待たせしました、荷物番までさせてしまって申し訳ありません、」
「んや？ここのカフェラテ、うまいな。」
「そうなんです。」
そう言って微笑むAは、やっぱり最寄りの席の男ふたりの
視線を捉えていて。
「今日で、休暇前の試験とか講義はもう終わりだな？」
「はい。」
「んじゃ、行くか。」
そう言って、Aに自分の荷物を持たせると、空いた方の
手でAの手を握る。
心の中で自分の独占欲を存分に満たしながら、ポーカーフェイスで
カフェテリアを後にした。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
講義が終わって、恭平にバイバイ、と伝えて講義室を出る。
結構急いでる筈なんだけど、たくさんの学生であふれる廊下は
4年目の今でも少し歩きにくい。
樹さんを待たせてる自覚はあるし、それより何より、早く樹さんに
会いたかった。
玄関を出て、待ち合わせのカフェテリアに入ると、女の子たちが
そわそわしているのがわかって、所謂『女の勘』というやつが
ピンとくるのがわかった。
………樹さんだ。
樹さんは、自分のルックスの良さをどれくらい自覚しているのか、
まだ私には計り知れないけれど、結構な確率で女の子たちの
視線を集めているのは確かで。
その女の子たちの視線を追おうと周囲を見渡したところで。
「A！」
と、大好きな声が耳に届いた。
「樹さん、」
小走りで樹さんのもとに向かうと、女の子たちが羨ましそうな、
そして少しの嫉みとやっかみを含んだ視線を私に向ける。
「お待たせしました、荷物番までさせてしまって申し訳ありません、」
「んや？ここのカフェラテ、うまいな。」
「そうなんです。」
「今日で、休暇前の試験とか講義はもう終わりだな？」
「はい。」
「んじゃ、行くか。」
自分の荷物を受け取ると、樹さんが空いた方の手で指を絡めてくれる。
変わらず注がれる彼女たちからの視線に、多少の居心地の悪さを
感じながら、カフェテリアを後にした。
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作者名：月華
| 作成日時：2023年5月15日 0時
