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「…A、」
「どうしたんですか、呼吸が、」
俺の様子を見て、すぐに体を起こして様子をうかがっている。
「いや、なんでも、」
「……でも、呼吸が乱れてますよ、何か、」
「………久しぶりに、夢、見て、」
それだけ告げると、Aは俺を安心させるように小さく微笑んで。
「樹さん、熱いシャワー浴びて着替えてきてください。私、
あったかいミルクティ淹れてきます。」
そう言って、俺の頬に右手を添えて、ほんの1秒だけの触れるだけのキスをくれた。
Aに言われた通り、熱いシャワーを頭から浴びる。
久しぶりに見たあの頃の夢は、結構なダメージを俺に与えていた。
「毎晩見てた頃よりキツ。」
そうこぼして、シャワーを出る。
体だけはさっぱりしてバスルームから出ると、キッチンからAの気配がした。
「A、」
その姿に向かって声をかけると、
「樹さん、」
柔らかく微笑んだAがこっちに歩いて来る。
「シャワー、さっぱりしましたか？」
「………ん、少し。」
「お茶、飲みましょう。」
そう言って俺にマグカップをひとつ渡すと、俺の右手を取って階段を昇り始めた。
「……あまい。」
「ミルクは多めにしましたし、奮発して蜂蜜もいつもより多く入れてあります。」
そう言って、自分も一緒にミルクティを飲んでいる。
「甘い方が、気持ちが落ち着きませんか？」
そう言いながら、マグカップをサイドテーブルに置いている。
それに合わせて同じようにマグカップを置くと、Aが樹さん、と
俺の名前を呼びながら、肩に頭を預けて寄り添ってくる。
どした？と、肩に腕を回して、髪にキスをひとつ。
「…いえ、先ほどはずいぶん呼吸も乱れていましたし、取り乱されていたようなので、」
少し落ち着かれたようで、安心しました、と言って胸に額を摺り寄せてくる。
「…うん、ありがとな、Aが隣にいてくれたおかげ。」
そう言って少し体を動かすと、肩に回した腕でAを抱き寄せて、ゆっくり唇を重ねる。
そのまま、右手を頬に添えて、じっくりと何度も唇を啄んだ。
「Aがいてくれてよかった、」
ありがとな、とつけ加えて、またAを抱きしめる。
樹さん、と俺の名前を呼んで、俺を抱きしめ返すAの手は暖かくて。
そのまま、ベッドの中でAを抱きしめたまま眠りに落ちれば、
朝まで夢を見ることはなかった。
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作者名：月華
| 作成日時：2023年5月15日 0時
