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「……A。」
「…っ、はい、」
「……俺は。ぶっちゃけ、Aと一緒にいられるなら
なんでもいいし、何がどうでもいい、と思ってる。」
「樹さん、」
ただ、と言葉を続ける俺を不安そうな目に見つめられる。
「俺は、お前が進学を考えていたこともあるのを知ってる。
それと俺を天秤にかけて、俺を選んだことも知ってる。」
「違いま、「違わねぇだろ。」」
途中で言葉を遮って、話を続ける。
「進学を諦めたとかじゃなくて。俺と離れたくない、と
思ってくれたのは知ってるし、俺をひとりにしたくない、って
心配してくれたっていうのもあるのはわかってる。」
「樹さん、」
「ただ、Aが勉強とか研究とかを、どうにか続けて
いけたらいいのにとは思ってた。ずっと。」
「……。」
「だから。」
「………なんですか。」
「進学していんだよ、A。」
そう言って、Aに独占されていない右手で頬を撫でてやって
話を続ける。
「あのな、A。」
「はい、」
「もし、王立大学の大学院に進むなら、俺たちは離れなくて済む。」
「…え？」
どういう意味ですか、とたずねるA。
「俺のうちから通える。」
「え、」
「実は、特急に乗れば、王都まではそう遠くない。」
「そうなのですか？」
「ん。」
「知りませんでした。」
そこで一度話を区切って、さっき淹れたミルクティを渡してやる。
ひとくち啜って、少し落ち着いた表情を見せるAに、続けるぞ、
と告げて。
「王立大学の院にある暗号理論の研究室に所属する学生は、全員
軍の人間で。」
「え、」
「ここに進むのは、軍に入隊して、暗号研究班に所属することが
条件として求められてる。」
「初めて知りました。」
「別に機密とかじゃないけど、敢えて積極的に公表していることでもない、くらい。」
「そうだったんですね、知りませんでした。」
「それから、今回は俺を再度所属させるための手段として、
Aを進学させたいから、学費は全部国から支給される。」
Aが目を見開いて、「国から！？」と叫んで。
「お前が頑張るのは、入試と研究室に所属してからの研究。」
「……あの、条件がすごすぎて、」
「Aが進学を望まないなら、俺も今回の話を断るだけだから
深刻に考えることねーぞ。」
「でも、」
「さっき言ったろ、Aと一緒にいられるなら、別にこの話を
受けようが断ろうがどっちでもいーの。」
わかった？と顔をのぞきこめば、少し安心した顔を見せてくれた。
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作者名：月華
| 作成日時：2023年5月15日 0時
