たとえばここが、世界の果てでも３ (ページ27)

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「認識に誤解があったら困るから、きちんと説明すんね。」
「はい。」
「まず、Aは大学院に進学する。で、研究内容は、暗号理論を指定
されてる。……ここまでいい？」
「はい。」
「で、博士号を取って、そのまま軍の暗号研究班に所属する、って
いうのが、俺を呼び戻すために軍が考えた道筋。」

士官学校はこの基地の一角だし、暗号解読班が活動してる部署もこの
基地の中にあるのは運がいい偶然だ。

「で、大学院は今の大学じゃなくて王立大学の大学院に進学してほしい
ってことなんだけど………それについて、なにかある？」
「………王立大学………、王都の、」
「…そう。」
「……あの、私は院進も就職も考えていませんでしたので、」
「うん、」
「何も準備をしていません、」
「知ってる。」
「絶対間に合いません、王立大学だなんて、国で一番の、しかも数学の
研究室には国内でも有名な教授が、」
「A、」
「私の能力ではとても、」
「A、」

数学の分野では国の最高峰です、とうろたえているAを落ち着かせるために、
名前を呼んで右手で頬を撫でてやる。

「うん、一旦落ち着こ。」
「それに、私は…、樹さんと、」
「A？」

緩く抱きしめて、背中をトントンと柔らかく叩いてやると、段々と落ち着いて
きたらしいので、手の動きを止めて、しばらく抱きしめていることにした。