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「お待たせいたしました。」
スタッフのひとりが俺に声をかけて、カーテンを開くとそこには。
「……どう、でしょうか、」
昨日選んだドレスを着て、髪もメイクもがっつりしてもらったAが
不安そうな顔をして立っている。
「……………は、」
目を見開いて、一文字だけ漏らしたまま自分を凝視している俺を、
一段と不安そうな顔をして見上げている。
「…あの、樹さん、」
「あ、ごめ、ちょっと………いや、結構びっくりした、」
「…変ですか？」
「ちが、逆逆、めちゃくちゃ綺麗、で、」
ドレスの裾から見える、少しヒールの高い靴もちゃんと青にしてくれてある。
「驚いた、綺麗、だよ、」
左手の甲から指先全部使って、頬を撫でてやると、くすぐったそうに
肩をすくめている。
「アクセサリーも。この色、似合うな。」
「樹さんのピアスに合わせてもらったんです、」
耳元で揺れる小ぶりのイヤリングには、小さな花が揺れている。
「この花、いいね。」
「ヤマボウシ、っていう花で、」
「うん、」
「樹さんの誕生日の花です。」
恥ずかしそうにそう告げて、視線を逸らしたAを軽く抱きしめて。
「ダメだ、もう行こう、」
それだけ言って、スタッフたちの方を見ると、用意してくれたコートを
差し出してくれた。
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作者名：月華
| 作成日時：2023年5月15日 0時
