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カウベルの音がもう一度する。
私は、慌ててパジャマの上にカーディガンを羽織ると、階段を駆け下りた。
「…はーい、」
ドアを開けると、そこには幼馴染が呆然とした顔で立っていた。
「………恭平、」
「A……いつ…、帰って来てん…？」
「…あ、昨夜、遅くに、」
「てか、今までどこ行っとってん！？」
ウォンコール、と、樹さんの家がある都市を口にすると。
「は！？」
大きな声で「ひとりで！？」と叫びながら、私の両肩をつかむ。
「…あ、うん、あの、お父さんの時計を…、」
「……誰、お前。」
遅れて私の背後から現れた樹さんが、警戒心むき出しの声でそう言いながら
私を片腕で抱き寄せる。
「……は、」
「樹さん、」
「……オマエこそ、誰やねん。」
樹さんに負けないくらいに警戒心を露わにした恭平が、私に向かって手を伸ばすけど、
樹さんは恭平の手が私に届く前に私を背後にかばった。
「樹さん、」
「なに。」
私を見ることなく、恭平を睨みつけたまま私に返事をする樹さん。
「あの、彼は…高橋恭平といいまして…幼馴染です、私の、」
「…へぇ。」
「恭平、あの、田中樹さん、私の、その、」
「この子、俺のだから。」
恋人、と紹介するには、その言葉は私にとって少しカジュアルすぎて、でも、
どうやって説明すればいいのかわからなくて、言い淀んでいたら、樹さんが
さらっと口に出した。
「……『俺の』…？」
怪訝そうに眉を顰める恭平。
その恭平の顔をまじまじと見て、「……高橋…？」と眉をひそめる樹さん。
一瞬、はっと目を見開いて。
「………オマエ、兄貴…いる…？」
無表情に見えるけど、少し動揺している感じで、樹さんがつぶやく。
「兵隊に取られて死んだわ。」
恭平のそのひとことで、もしかして、と口にした名前は。
「どうして、それ、」
恭平だけでなく、私も目を見開いて樹さんのことを見つめていた。
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作者名：月華
| 作成日時：2023年3月28日 1時
