たとえばここが、世界の果てでも (ページ40)

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松村さんが「終わったよ。」と言って、樹さんに義手を渡している。

樹さんは、器用に片手でシャツの前ボタンをはずして上半身裸になると、
左手で義手を持って取りつけている。

意図せず視界に入った樹さんの上半身は、その見た目からは想像できないような
綺麗な筋肉がついていて。やっぱり軍人として鍛え上げられた人だったんだな、と
頭のどこかで冷静に考えていたことにふと気づいて、一気に顔が熱くなった。

ボタンをはめながら、ふとこちらを見た樹さんが、やっぱり小さく口角を上げると
こちらに近づいてきて顔を耳元に寄せて、「…見た…？」といたずらっぽい声がした。

思わず大きく後ずさると、高地さんが「からかうなって。」と笑っている。

ボタンをはめ終えた樹さんは、5人の方を振り返ると、

「うちのパントリー片づけたんだけどさ。ワインとチーズがめちゃくちゃあった
から、持ってきた。お前らで分けて。」

そう言って、今度は私の方を見る。

「行こ、A。」

メンテナンスが終わった右手を差し出してくれるので、私は「はい。」と返事を
して、樹さんの右手を取った。

わいわいと出て行く4人を、私と樹さん、それからゆっくり立ち上がった松村さんが
追いかける。

そのまま樹さんのオートモービルの荷台から、皆さんが荷物を降ろしている。

「え、ねぇ樹、これ全部もらっていいの！？」

まだ歩いている樹さんに、ジェシーさんが大きな声で聞いてくる。

「おー。ジェシーが好きなチーズもあるし、全部やるよ。」

やったー！と盛り上がっている4人を見ながら、樹さんは「北斗、」と松村さんの方を
見て立ち止まった。