たとえばここが、世界の果てでも (ページ28)

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家に戻ると、ドアを閉めた瞬間、樹さんが私を抱き寄せて。
それと同時に、我慢していた涙が一気に溢れた。

「A、ごめんな。」

すぐに助けてやれなくてごめん、と。自分だって不愉快な思いをしたのに、樹さんは
最初に私に謝ってくれる。

私は、泣き止むことができないまま、頭を左右に振った。

「私こそ、申し訳ありません、適当に誤魔化して、輪を抜けることだってできたのに、」

泣いている私の頭をしっかり抱えて抱きしめてくれる樹さん。

「樹さん、」
「…ん？」
「私は…、両親のことを話して、つらくなったんじゃ、ないんです、」
「…うん、」
「樹さんのことを、わかった風に言われたのが嫌で…、」
「うん、」
「……私たち、傷の舐めあいをして、依存しあってるんですか…？」

それが一番つらかった、と、樹さんに訴える。

「……A。」
「…はい、」

私を抱きしめた腕を緩めて、顔をのぞきこむ樹さん。

「目が腫れるぞ。」

そう言って、シャツの袖で涙を拭ってくれる。

「あったかいミルクティ飲も。」

優しい目をして、私の手を引いてくれる。

まだ泣き止めずにぐずぐず鼻を鳴らしている私を振り返って、「もう泣くな。」と
優しく言ってくれた。