たとえばここが、世界の果てでも (ページ26)

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翌日。

久しぶりに、ふたりで市場に買い出しに向かった。

ぎこちなく指を絡めて、手をつなぐ。
柄じゃない、と思っても、少しでも近くに置いておきたい、という願望の
表れなのか、どちらからともなく手をつないでいた。

戦争が終わっても、この街に住み着いている俺について、住人のほとんどが
無関心と言ってもよかったけれど、ある日突然、伝声管で罵ってくるヤツが
いるのと同じで、住人の中にも俺をよく思っていないヤツがいるのは当然
と言えば当然で。

「Aじゃないか！いいスイカがあるよ！どうだい！」

Aに声をかける市場の女たちは、一貫してAの『味方』気取りだ。

「樹さん、スイカ、好きですか？」

俺の方をうかがって、買おうかどうか判断しかけているAを、手招きして
呼び寄せている。

「他にも今日はいい果物揃ってるよ！覗いていきなよ！」

多少強引ともとれる声に、Aが戸惑っているのがわかる。

俺は小さくため息をついて、Aを見下ろした。

「行って来な。」
「…え、でも、」
「市場の女連中は、お前に『目を覚ましてほしい』んだろ。」
「……どういう意味ですか…？」
「俺みたいなのと一緒に暮らしてんのを心配してんだよ。」

俺の生活態度、話しただろ、と言うと、なんともいえない表情になるA。

「…どっちみち、なにか果物食いたいって言ってたべ。」

…言いましたけど、と、納得いってなさそうな物言いをしている。

「長引かせないように、こっちから呼ぶから。」

そう言って髪を梳いてやると、Aは少し表情を和らげて、果物屋に足を向けた。