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樹さんの食事を用意するようになって、数日おきに市場に買い物に出かけるようになった。
市場にお店を出している人たちとも顔見知りになって、今では会話を交わすくらい。
「お！Aじゃないか！」
「おはようございます。」
いつものお店で野菜を買う。
「今日はいいオレンジが入ったからね、おまけだよ！」
おかみさんが、野菜が入った紙袋にオレンジをひとつ入れてくれた。
「ありがとうございます。」
小さく頭をさげて、お店を後にする。
「また来ておくれよ！」
手を振って見送ってくれるおかみさん。もう一度頭を下げて、樹さんの家へと足を向けた。
「ただいま戻りました。」
2階に上がって、樹さんの部屋をノックしながら声をかける。
「おー。おかえり。」
ちらっと視線だけを上げて、返事が返って来た。
「あの、ブランチはサンドイッチにしようと思うんですけど、」
と聞いてみると樹さんは、もう一度視線を上げて。いいね、と小さく片方の口角を上げて答えてくれた。
ふたりで向かい合ってサンドイッチを食べる。
ひとくちかぶりついて、私の方を見る樹さん。私を見ながらゆっくり咀嚼して飲み込むと。
「うまい。」
とひとこと。
ミルクティをひとくち啜って、「料理がうまいんだな、Aは。」と、また小さく口角を上げてくれた。
「……Aのメシなら、もっと食えるかも。」
食後のミルクティは、樹さんが淹れてくれた。
「本当ですか。」
「うん。」
「じゃあ、夕食から、もう少し、」
「うん、もう少しだけ、増やして。」
「かしこまりました。」
なんだか嬉しかった。
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作者名：月華
| 作成日時：2023年3月28日 1時
