たとえばここが、世界の果てでも (ページ48)

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「……え、樹さん…？わっ！」

樹さんは、突然がばっと起き上がり、私の方を見て座ると、震えた声で
そのまま続けた。

「俺の、船に乗ってた、アイツの兄貴、」
「樹さん、」
「戦艦が沈んだとき、俺のことを抱えて脱出してくれて、一番近くにいた
こーちの戦艦まで運んでくれて、一緒に引き上げられたけど、甲板でそのまま、」
「樹さん、」
「………ごめん、A、ごめん、」

樹さんの声がどんどん震えて、呼吸も浅く早くなっていくのがわかる。

「…え、樹さん？」

声と同じように震える手を私に伸ばして、ぎゅっと抱きしめる樹さん。

「俺が、お前から親父さんを奪った、」
「樹さん？」
「そのせいで、お袋さんまで、」
「樹さん、」
「その上、恋人まで、」
「樹さん！」
「許して、A、」
「樹さん！」
「俺のせいで、ごめん、どこにも行かないで、A、」

私を抱きしめる腕に、どんどん力が入って行く。

「樹さん！！！」

思わずその名前を叫ぶと、一瞬体を大きく震わせて。

「………ぁ…、」

私をゆっくりと解放したあと、ごめん、とぼうぜんと呟く樹さんがいた。