よもつひらさか (ページ8)

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「森山ー！」

知った声に振り返ると、そこにはゼミの仲間がいた。

「馬子にも衣裳だなぁ！」
「うるさいな。」
「いやいや、いいカンジだよ、マジで。」
「ほらやっぱりわかるひとにはわかるよね！」
「はぁ！？」

そんなことを言い合いながら、ゼミでは数少なかった女の子たちとも合流し。

無事、式も終えてみんなで写真を撮ったり、また会おうね、と約束しながら別れを惜しんでいると。

「Aさん！」

聞き慣れた声がした。

「阿部さん！！」

門のところには、スーツを着た阿部さんと。

「………樹…！！」

同じようにスーツを着た樹。

きっちりと着こなしている阿部さんと、少し気崩している樹。
どっちも人目をひく華やかさで、理工学部、他学部問わず、女子の目を一斉に集めている。

「どうしたんですか！？」
「迎えに来たんだ、うるさいのが連れてけー、って言うもんだから。」

と樹を横目で見る阿部さん。その隣で、樹が面白くなさそうに立っている。

楽しそうに微笑む阿部さんを見て、少し離れたところからは

「やっぱりつきあってんだって。」だの「ワンチャン狙ってたんだけどなー、森山。」だの
聞こえてくる。

『ワンチャン狙ってた』の声に反応して、軽くにらむ樹。
声の方を見て阿部さんが口を開く。

「ごめんね、この子はダメなんだ。」

そう言って、口だけで微笑んで、樹との間に私を挟む。

「行こう、みんな待ってるから。」

私は、慌てて振り返って「またね！！」と手を振る。