ひと悶着 ページ19
お風呂の戸を開けて中に入ると、鏡に自分の姿が映っている。
「…………ボア・ハンコック……。」
樹くんが読んでいる人気コミックの１ページが頭に浮かぶ。
ラジオで樹くんと高地さんが盛り上がっていた話題では、ふたりが『たまらん！』と
話していたキャラクターはもういわゆる上から『ボン・キュッ・ボン！』なお姉さんで。
『ボア・ハンコックと同棲したい。』
とか、そんな感じの話題に『わかるー！！』とわかりあっていたふたりとか、もうさ。
「………めちゃめちゃ貧相じゃん…。」
別に、自分で自分の身体がたるんでいるとは思わないけど、『ボン！』という効果音が
欲しい場所にその音が当てはまるかと言われれば、お世辞にも言えない。
控えめな膨らみに手をあてがってみれば、自分の手でもすっぽり収まる。
「…樹くんの手には全然足りない……。」
マンガのキャラクターに対して抱く感情としてどうなの、とは思うけど。
なかなかに惨めな気持ちを抱きながら体を洗って、浴槽に沈んだ。
ドライヤーで髪を乾かしていると、玄関からがちゃがちゃと音がする。
ただいまー、と声がして。
「Aー。風呂ー？」
と言いながら戸が開くと、少し驚いた顔の樹くん。
「うぉ、びっくりした、」
ただいま、と笑顔になって手を洗っている。うがいをしてから、まだ乾ききっていない
髪を乾かしている私の手からドライヤーを抜き取る。
「やったげる。」
「え、いいよ、樹くんお風呂入ったら？」
「………え？」
いつもだったら、乾かしてもらう私が断ったから、樹くんの顔には少しの戸惑いがある。
そのまま私は自分で髪を乾かして。
「湯冷めしちゃうから、向こう行ってるね？」
とだけ言い残して、リビングに戻ろうとしたら。
「ちょ、A。」
つかまって。
「…なんかあった？」
そのまま緩く抱きしめられる。
「……なんかって…？」
「そんなんわかるわけねーべ、なんかっつったらなんかだよ。」
無理矢理視線を合わせられて、逸らすことを許されない。
「ないよ、なにも。」
「……そ。」
その日。私は初めて、自分の体調以外で樹くんからのお誘いを断った。
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月華(プロフ) - ゆうきさん» コメントありがとうございます！嬉しいです。ふとしたときに、お互いをわかってて、お互いを大好きで、というのを書きたいと思っています。大好きって言っていただけて嬉しいです。また遊びに来てくださいね。 (2023年1月3日 11時) (
レス) @page14 id: 1c32e2fa67 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうき(プロフ) - 更新ありがとうございます！！主人公ちゃんが自分の家に帰ってることもお見通しで樹くんも主人公ちゃんの家に帰ってくるのまじ最高です。月華さんのお話全部大好きです！ (2023年1月3日 2時) (レス) @page14 id: 9ee5ac8e16 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：月華
| 作成日時：2022年11月29日 23時
