１６０〜彼女の行く先／樹〜 ページ43
１５人そろって、散歩を兼ねた結界の見回りへと出発した。
何個目かの祠を過ぎた後、ふと結界の外側に目をやると。
「…………！！」
幽世へと向かう坂−ここの名前の由来になってる、黄泉比良坂−が目に入った。
そこには。
数ヶ月前に、Aに放った呪詛が返って、そのまま命を落としたあの人が、必死に
なって何かを探している様子が見えた。
「…さっ、」
『桜子さん』、と声を出しそうになって咄嗟に言葉を飲む。
でも。
俺の発した声を、一瞬でとらえたらしい桜子さん(の魂)は、弾かれたように顔を上げてキョロキョロと辺りを見回している。
結界が張ってあるから、こっちからあっちを見ることができても、あっちからこっちは見えない。
この集落にたどり着くのは、本当に偶然というか…いろいろなものが重なった人
だけだから、一般的には体から抜けた魂はいずれ幽世へと向かう。
「樹さん、」
その声が、Aの耳にも、全員の耳にも、確実に届いた。
「…！！」
A以外の全員が、その姿を認識して、息を飲んでいる。
聞き覚えのある声に、Aの青ざめた顔が視界に入った。
じゅり、と、恐怖を覚えたAが俺を呼ぶ。
「しっ。」
結界の奥が集落であることを悟られないように、１５人全員が気配を消して動きを止めている。
外に声が漏れないように、Aの耳元に唇を寄せた。
「ダイジョブ、俺たちがいるから。ぎゅーしてるから、怖いの我慢できる？」
震えながら頷いて、俺にしがみつくAを必死に抱きしめる。
結界の外では、俺の名を何度も呼びながらすすり泣く桜子さんがいた。
この辺に集落があることを覚えていて、俺に会いに来ようとしているように見える。
泣きながら俺の名前を呼ぶ桜子さんには、気の毒だけれども。
決して許されることはない罪を犯した彼女を許すようなお人好しは、このメンバーの
中にはいない。
『…私は…樹さんに愛されたかっただけなのに』
とその想いだけを強く残して。
集落を探しながら、彼女は幽世へと坂を下って行く。
俺への想いを抱きしめて。
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月華(プロフ) - 糸山露子さん» コメントありがとうございます。特別編といいますか、後日譚や小話などが、続編として公開されています。『この小説の続編を見る』から飛んでみてください。 (5月27日 22時) (
レス) id: 1c32e2fa67 (このIDを非表示/違反報告)
糸山露子(プロフ) - 特別編を書いて欲しいです (5月27日 21時) (レス) id: b4b34b6799 (このIDを非表示/違反報告)
月華(プロフ) - 凪さん» コメントありがとうございます。なんとか無事終了いたしました。ネタを思いついたら、また彼らに登場してもらうこともあると思います。読み返し、嬉しいです。これからもよろしくお願いします！ (2022年11月20日 13時) (レス) id: 86be01ea37 (このIDを非表示/違反報告)
凪(プロフ) - 完結おめでとうございます!!毎日の更新を楽しみにしていたのでちょっと淋しいです〜( ´^`° )また何度も読み返して来ます!! (2022年11月20日 5時) (レス) id: 789ab475c3 (このIDを非表示/違反報告)
月華(プロフ) - ★mmiioo★さん» コメントありがとうございます。お話はもう少し続きます。ご期待に沿える内容でありますよう。また遊びに来てくださるのをお待ちしています。 (2022年11月12日 23時) (レス) id: 1c32e2fa67 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：月華
| 作成日時：2022年11月3日 23時
