いたずらな東風３ ページ6
「今日は、僕におごらせてください。」
「でも……。」
「お礼なんですから。」
ね、と言って見下ろすと、本当に申し訳なさそうに「ごちそうになります。」と
頭を下げた。
会計をすませて、店のドアを開ける。森山さんの後ろからドアを開けようとすると、
俺の手に気づかない森山さんの手が、一瞬早くドアにかかる。
キィ、とドアを開ける音がした。
と。
「ぁ………。」
時が、一瞬止まった気がした。店の前の通りを突風が駆け抜け、ドアがものすごい
勢いで跳ね返された。
その瞬間。
俺は、反射的に森山さんの肩に手をやり、思いっきり引き寄せていた。
派手な音を立てて、ドアが締まる。
ほんの数秒、店の中が静まり返った。
「「「大丈夫ですか！？」」」
店員さん、森山さん、そして僕。
３人の声が響き渡る。
「私は平気です。それより、伊沢さんは！？」
心配そうに僕を見上げる森山さんに、僕は微笑んで見せた。
「どこもなんともありませんよ？」
「良かった……。」
二人ともなんともないことを告げると、店員さんは安心したように店に戻っていった。
ふと、自分が森山さんを抱きしめていたことに気づき、森山さんを腕から解放する。
「あ、すみません……。あの、とっさのことでしたからつい。」
「いえ、本当にありがとうございました。一人だったら、ドアに思いっきりぶつかってました。」
私、鈍いんで……と困ったように笑う。
その笑顔が、たまらなくかわいらしくて。
俺は、俺よりも２０�儖幣紊眈�さいこの女の子に、少しずつ惹かれ始めていることに気づいた。
「行きましょうか。送ります。」
ドアを開けて、店を出た。
「突風だったみたいですね。」
「えぇ。」
さっきの風がウソのように、街は静かだった。
東風のいたずらで、なんだかおいしい思いさせてもらっちゃったみたいだな。
俺はなんだかご機嫌で、ポケットから車のキーを取り出す。
「さ、どうぞ。」
助手席のドアを開いて、森山さんを乗せる。
エンジンをかけ、サイドブレーキを降ろすと、俺の愛車は軽快に走り出した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 158人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「QuizKnock」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
月華(プロフ) - てるさん» コメント、ありがとうございます！応援してくださるだなんて…！がんばります。これからもよろしくお願いします。 (2019年1月29日 22時) (
レス) id: 333e4733fe (このIDを非表示/違反報告)
てる - このお話大好きです、、！！応援しております！ (2019年1月29日 21時) (レス) id: d6f680dd65 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：月華
| 作成日時：2019年1月27日 22時
