いたずらな東風２ ページ5
その夜。
待ち合わせの場所に現れた森山さんは、なんだか申し訳なさそうな顔をしていた。
「こんばんわ。」
「こんばんわ。お待たせしてすみません。」
「いえ、全然。５分前ですよ、まだ。」
腕時計を見せると、森山さんは少しほっとした表情を見せた。
「行きましょうか。」
森山さんは少し微笑んで、「はい。」と答えた。
和食が食べたい、という森山さんのリクエストに応えて、最寄りの店に入る。
こぢんまりとした店のカウンターの最奥に並んで座った。
「あの……。」
「はい？」
「いいんですか？」
「何がですか？」
「こんな、あの、私なんかと……。」
「“食事していて”？」
「あ、はい……。」
「ダメですか？」
「いえ、私は全然かまわないんです、あの、特定の彼もいませんし…。」
「じゃ、問題ないと思います。」
「そうではなくて、伊沢さんの方が…。」
「僕？」
「ええ、あの、いろいろと……。」
「僕も今、特定の彼女はいませんから。平気ですよ？」
「あの、それだけじゃなくて……。」
「ファンの人とかテレビとか？」
「まぁ……そんな感じです、ハイ。」
「大丈夫ですよ。」
俺はそう断言して。浅漬けの白菜を箸で摘むと、口へと運んだ。ごはんと一緒にゆっくりと
咀嚼して飲み込む俺を、じっと不安そうに見つめている。口の中のものを飲み込むと、
僕はまた口を開いた。
「本当に。案外気づかれないものですよ。」
「でも…。」
「現に森山さんは、昨日、気づかなかったでしょう？」
「あ、あれは……！」
途端に顔が真っ赤になる。それがおかしくて、くすくすと笑う。
「すみません。意地悪言ってしまいました。」
「……昨日のことについては、本当に申し訳なく思っているんです。私ったら……。」
「いえ、なんとも思っていませんよ、本当に。」
「すみません……。」
真っ赤な顔のまま、森山さんはご飯を一口食べた。
食後のお茶を飲み時計を見ると、知らないうちにかなり時間が経過していた。
「すみません、遅くまで引き留めてしまって。」
伝票を持って立ち上がる。
「全然、平気です、全然。」
「行きましょう。今日は送りますから。」
「あ、ありがとうございま……あの、伊沢さん！」
「はい？」
「あの、お会計……！」
「今日は、僕が。」
「そんな、私、すごい食べちゃいましたし……。」
「別に、普通ですよ。そんなにたくさん召し上がってないです。」
でも、と言いかけた森山さんの言葉を遮る。
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月華(プロフ) - てるさん» コメント、ありがとうございます！応援してくださるだなんて…！がんばります。これからもよろしくお願いします。 (2019年1月29日 22時) (
レス) id: 333e4733fe (このIDを非表示/違反報告)
てる - このお話大好きです、、！！応援しております！ (2019年1月29日 21時) (レス) id: d6f680dd65 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：月華
| 作成日時：2019年1月27日 22時
