ずっとあなたと２ ページ34
私が何も答えられないでいると、伊沢さんは少し自嘲気味な笑顔で続けた。
「だって、彼がAのこと“こいつ”なんて言うから。“俺のだ！”って主張したかった
んだよね。ごめんね、コレ、なんて言って。」
「…………はぁ。」
伊沢さんの手は、相変わらず私の髪を梳いている。
「ねぇ、A。」
「………はい。」
「もっと、わがまま言ってね。」
「え？」
「わがまま言ってくれて全然構わないし………って言っても、全部叶えてあげられるかどうか
自信ないけど。でも、Aがどう思ってるか知りたいし。それにね。」
「？」
「もっと、泣いていいんだよ？」
「…………え。」
「どうしたの？」
いつも泣かない私に、伊沢さんが気づいていてくれてるなんて。私は、自分が思っていたことを口にした。
「男の人って、女の子に泣かれると困ると思ってたから。」
「まぁ、困らないとは言わないけど。でも、Aは泣かなさすぎ。」
「だって、“泣くな”って。」
「誰が？」
「伊沢さんが会った………その……前彼。」
「そんなこと言われたの？」
「泣くと、冷静に話し合えないからって。だから、いつの間にかちゃんと泣けなくなってた。
昔は、しょっちゅう泣いてました。」
「…………。」
「そしたら、今日……言われたんです。」
「なんて？」
「いつもにこにこしていて負の感情を見せないから……私が自分を見せてないんじゃないかって
思って、“俺じゃだめなのかも”って思って………“私から逃げた”って。」
「ふーん。」
少し考えるそぶりを見せ、すぐに「変なの。」と呟く。
「え？」
「だって、人が泣くのは感受性が豊かな証拠だよ。別に、泣くからってそれが負の感情とは
限らないし………まぁ、そういう人っていうのはちょっと精神的に高ぶっただけで泣いちゃうんだろうけど。でも、そうやって涙腺が緩むのもその人の感情の表し方なんだよ。それを否定して、しかも負の感情を見せないって言うのも……その前にそれを負の感情って言うのも……何もかもおかしいよ。」
「伊沢さん……。」
「それが、Aの感情表現の仕方なんだから。ちゃんと感情表現しないと、心が疲れちゃうよ。」
「………っふ……。」
目から、涙が溢れ出す。
自分でも気づかないうちに、映画でしか泣けなくなっていた自分の……久しぶりの涙だった。
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月華(プロフ) - てるさん» コメント、ありがとうございます！応援してくださるだなんて…！がんばります。これからもよろしくお願いします。 (2019年1月29日 22時) (
レス) id: 333e4733fe (このIDを非表示/違反報告)
てる - このお話大好きです、、！！応援しております！ (2019年1月29日 21時) (レス) id: d6f680dd65 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：月華
| 作成日時：2019年1月27日 22時
