すれ違う３ ページ29
伊沢さんとの約束が取り付けられなくて、私は伊沢さんに注いでいたパワーを
全て大学でのことに費やしていた。
音楽に没頭していれば、伊沢さんに会えないことで落ち込むこともないし、鳴らない
電話を前にしていつまでも起きている必要もない。そう気づいた私は、オケのリハーサル合間のアンサンブルや室内楽へのお誘い、
自主企画の小さなコンサートへの出演、コンクールへの出場計画など…無理なスケジュールでもどんどん組んだ。
「まだ居残りしてんの？」
「！？」
誰もいないと思っていたレッスン等に声が聞こえたため、びっくりして飛び上がりそうになった。
「………工藤くん。」
「オマエ、本当に練習好きだね。ここんとこずっと居残り自主練だろ。」
「まぁね。自分もそうでしょ？」
「俺はいんだよ。別に。」
「何ソレ。」
「で？この後ひと段落させてから帰るんだ？」
「うん。」
「いつからそんな練習の虫になったんだよ？」
「………忙しいの。こんな時間まで練習してるくらいだから。用がないなら帰って。」
「あのさ。」
「何？」
視線を楽譜に戻しながら適当に返事を返す。
すると。
「やり直せないかと思ってさ。」
信じられない言葉が聞こえた。
「は？」
呆れてものも言えない私に、誠は続けた。
「ずっと後悔してた。別れたこと。」
「………。」
「あの時さ、逃げたんだよね、俺。」
「何が。」
「いつもにこにこしていて、なんていうか……負の感情をあんまり出したことないだろ、お前。
特に、悲しい、とかさ。それに気づいたときにさぁ……Aは、俺の前でも全部見せてくれて
ないんじゃないかと思って。３年もつきあってるのになぁ、と思ったら……ちょっとね。
俺じゃダメなのかもしんないって。」
「………。」
「結構悩んだんだぜ？これでも。」
「……そう……？」
「そうだよ。」
「勝手なこと言わないでよね。」
「は？」
「誰のせいで私がこうなったと思ってんのよ！……っ……。」
「A！」
怒鳴って……思わず立ち上がると……ひどいめまいがした。
私はそのまま崩れ落ちて…後のことは覚えていない。
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月華(プロフ) - てるさん» コメント、ありがとうございます！応援してくださるだなんて…！がんばります。これからもよろしくお願いします。 (2019年1月29日 22時) (
レス) id: 333e4733fe (このIDを非表示/違反報告)
てる - このお話大好きです、、！！応援しております！ (2019年1月29日 21時) (レス) id: d6f680dd65 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：月華
| 作成日時：2019年1月27日 22時
