すれ違う２ ページ28
「ドイツから戻ってくる人って……工藤くんだったのね。」
「誠でいいよ。別に。」
「それはムリ。」
「そ。」
学生ホールの椅子に座り、二人でコーヒーを飲む。
「元気だった？」
「まぁね。」
「向こうに彼女置いて来たんだ？」
「作ってねぇし。彼女。」
「もったいない。工藤くんなら、よりどりみどりでしょ？」
「A。」
「やめて。」
呼び捨てにされることを拒否して、立ち上がる。紙コップをゴミ箱に捨てると、私はレッスン室へと足を向けた。
誠は、当然のごとく学生オーケストラへと加入してきた。ヴァイオリン奏者の一員となって、時々うちのパートに所用で来たり
していたけれど、私は必要最低限のことしか話さなかった。
「もしもし。」
『A？昨夜……。』
「あ、もしかして電話くれましたか？」
『いや、できなかったから。遅くまで起きて待っててくれたでしょ？』
「そうでもないですよ。知らないうちに寝ちゃって。だから、私こそ伊沢さんが
電話くれてたなら申し訳なかったです。」
『そう。あ、ごめん。オフィス抜け出して来てるんだ。もう行かなきゃ。福良さんが呼んでる。』
「わかりました。」
『まだスケジュール、いつ空くか明言できないけど。すぐに会えるようにするから。』
「はい。楽しみにしてます。」
『じゃ。おやすみ。』
「おやすみなさい。」
待ち望んだ伊沢さんからの電話は、ものの１分で終わった。
「え、もうこんな時間！？」
いつの間にか、私以外に誰もいなくなったレッスン棟。何気なく時計を見て目が
飛び出るほど驚いた。
夜までにキリをつけたかった新曲の練習は、まだまだ道のりが長かった。今日は金曜日。
中途半端なところで週をまたぐのはイヤだった。
「仕方ない、もう少しやってから帰るかぁ。」
腹を決めると、少し気が楽になった。そうと決まればコーヒーでも飲もう。私は、楽譜を片手に、自動販売機が設置されているエリアへと向かった。
「ふわー。」
コーヒーを飲んで、少し落ち着く。椅子の背もたれに体重を預け、天井を仰ぎ見た。
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月華(プロフ) - てるさん» コメント、ありがとうございます！応援してくださるだなんて…！がんばります。これからもよろしくお願いします。 (2019年1月29日 22時) (
レス) id: 333e4733fe (このIDを非表示/違反報告)
てる - このお話大好きです、、！！応援しております！ (2019年1月29日 21時) (レス) id: d6f680dd65 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：月華
| 作成日時：2019年1月27日 22時
