すれ違う１ ページ27
最近、今までにも増して、伊沢さんはとっても忙しい。
『ごめん。』
電話の向こうから、伊沢さんの申し訳なさそうな声が聞こえる。
『まだ作業が終わらないんだ。』
「そう、ですか……。」
『本当にごめん。時間ができたら、後で電話するから。』
「わかりました。」
『ごめんね。』
「いえいえ。今度、おいしいもの食べさせてくださいね。」
『わかった。約束するよ。』
私の冗談めいた口調に、伊沢さんの声も少しホッとしたように聞こえた。
通話をオフにして、スマホをテーブルの上に広げた楽譜の上に放り出す。そのまま、ベッドに体を投げ出した。
「またですか。」
ぼそっと独り言。
ここのところ、約束が守られた記憶がない。
伊沢さんが忙しいのは、お仕事が順調な証拠で。それはとってもいいことだと思ってるし、伊沢さんのお仕事……QuizKnockの編集長であるということ……
はとても素敵な
お仕事だと思っているし、QuizKnockのことを大切にしている伊沢さんのことを、私も大切に思っているのは事実。
それでも。
人間というのは欲深い生き物で、伊沢さんと想いが通じ合っているというだけで幸せに思っていたはずの私は、最近は会えないことに不満を感じるようになっていた。
目を覚ますと、点けっぱなしのテレビからは深夜のテレビショッピングが流れていた。
「寝ちゃった………って、電話！」
飛び起きて、テーブルの上でそのままになっているスマホを掴む。
「…………。」
着信履歴も、メッセージの受信も。
１件もなかった。
その後、私は伊沢さんからの電話を待ち続け。
気がついたら家を出なくてはいけない時間になっていた。
その日。オーケストラのコンマスに挨拶をしていたのは、この世で一番会いたくない人だった。
「工藤くん…。」
「久しぶり。」
２年前に、ドイツに留学したはずの誠……当時、つきあっていた人……だった。
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月華(プロフ) - てるさん» コメント、ありがとうございます！応援してくださるだなんて…！がんばります。これからもよろしくお願いします。 (2019年1月29日 22時) (
レス) id: 333e4733fe (このIDを非表示/違反報告)
てる - このお話大好きです、、！！応援しております！ (2019年1月29日 21時) (レス) id: d6f680dd65 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：月華
| 作成日時：2019年1月27日 22時
