ほんの少しの勇気１ ページ23
何度かの呼び出し音。伊沢さんが出るまでの間が、ものすごく長く思えた。
『もしもし。』
「あ、あの……。」
『どうしたの？』
「あの、さっき別れたばかりでなんですけど……。」
『うん。』
「あの、あ、会っていただけませんか。」
『今から？』
「だっ、ダメ、ですか。あの、お、お話が……。」
『全然。全力疾走で行きます。』
「え、伊沢さん！？」
私の声は届かず、通話が終了した。
現実逃避のようにぼけーっと放心していると、伊沢さんは本当に全力疾走でやって来た。
エントランスのロックを開け、待つこと２分。玄関のインターフォンが鳴った。
「はいっ。」
『伊沢です。』
「今、開けます。」
ロックとドアチェーンを外し、ドアを開ける。
そこには、真剣な顔をして肩で息をしている伊沢さんがいた。
１５分後。
さっきと同じ位置でソファに座り、紅茶を飲む伊沢さんと私がいた。
自分で呼び出しておいて、どうにも切り出せない私を気遣ってくれたのか、伊沢さんが、妙な沈黙を破ってくれた。
「嬉しかったよ。」
「ぇっ？」
「Aちゃんから会いたいって言ってくれたの、初めてだから。」
「え、そう……でしたっけ？」
「うん。嬉しかった。すごく。」
「伊沢さん……。」
「話って……何？」
顔をこちらに向けて、そう聞かれる。その言葉に緊張して、思わず伊沢さんを見上げると。
「っ！」
伊沢さんの、まっすぐな視線にぶつかる。
「ぁの、その……さっきの……。」
「うん。」
「い、伊沢さんが言ってくださったこと……その、すごく嬉しかったです。」
「うん。」
「でも、あの……、その……。」
伊沢さんの目がわずかに曇る。私が、断るんじゃないかってきっと……そう思ってる。
言わなきゃ。
私が不安に感じていること。
がんばって、私。
きっと、伊沢さんなら受け止めてくれる。
「怖いんです………。」
私は、ぽつりと言うことができた。
「怖い？何が？」
「あの………。」
「大丈夫。ちゃんと、待ってるから。少しずつ、ゆっくりでいいから。何から話して
くれてもいいからね。ゆっくり話して。」
伊沢さんの声は優しくて。視線もすごく優しくて。私は、伊沢さんがかけた何かの
魔法に操られるように、そのままぽつぽつと話し始めた。
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月華(プロフ) - てるさん» コメント、ありがとうございます！応援してくださるだなんて…！がんばります。これからもよろしくお願いします。 (2019年1月29日 22時) (
レス) id: 333e4733fe (このIDを非表示/違反報告)
てる - このお話大好きです、、！！応援しております！ (2019年1月29日 21時) (レス) id: d6f680dd65 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：月華
| 作成日時：2019年1月27日 22時
