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「ふふふ、随分とちんけな刀じゃないか。そんなもので俺の頸を斬れるとでも?」
「少なくとも、さっきから付き纏ってくる貧弱な水は斬れたけどね」
「っ……ほう、ならこれはどうだ? ……血鬼術 水縄縛(ミナワシバリ)」
Aの言葉に鬼の眉が吊り上がった。
手のひらを広げ、扇のように横へ払うと格子状の水の鞭が水の柱から伸びてくる。
息を飲んだ杏寿郎とは反対に、スゥ……と目を細めたAは、低く腰を落とし、刀を薙ぐ。
刃先は無数の鞭には届いていない……ように見えたが、眼前まで迫った鞭は力を失い、ただの水となって地面に染み込んでいった。
「なに!?」
「(あの日輪刀……刀身が、伸びている……?)」
目を見張る杏寿郎の瞳に映るのは、淡い光。
本来の刀身の長さを超えて、長刀のように長く、光を纏って伸びていた。
見たことがない特殊な日輪刀を振るい、素早い斬撃で水の鞭を刻んでいく。
元から脇差しほどしかない刀は、光によって刀身が伸びても重さは変わらないのだろう。日輪刀は体の一部となって、本来の剣技では成せない動きを見せる。
「(凄い……なんという身体能力! まるで風のようだ。彼女はどれだけの鍛錬を積み、技を磨いてきたのだろうか!)」
杏寿郎は驚くばかりだった。この土の壁はどうやって出現させたのか、何故刀身が伸びているのか検討もつかないが、Aが並外れた強さと才気煥発の持ち主だということはわかる。
靱やかな体を活かして最低限の動きで攻撃を避け、繊細でいて豪快な斬撃を繰り出す。
完全に相手の動きを読み取っていた。
……そしてAは、呼吸を一切使っていない。
その戦い方に杏寿郎の目は釘付けだった。
【にんにんコソコソ噂話】
・チャクラ刀
チャクラを纏わせた刀。風遁のチャクラを纏わせることで斬れ味は増し、放出するチャクラを調整することで刀身を伸ばすこともできる。
Aは藤襲山で玉鋼を選んだとき、こっそりチャクラを込めていた。刀鍛冶は玉鋼から感じる未知の気配と「脇差しを作って欲しい」という特殊な要望を怪しんでいた。日輪刀を届けた際にAが日輪刀にチャクラを纏わせると、刀鍛冶は腰を抜かしたらしい。
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作者名:爽 | 作成日時:2021年5月10日 20時