Jupiter

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Aは心肺蘇生を開始し、蹲る隊士に声をかける。

「ベルトで傷口の上をきつく縛って、止血して！」

「うっ、げほっ！……はぁ、わ、わかっ……た」

「……戻ってきて……息をして！」

一定のリズムで両手に体重をかけ、胸部を圧迫していく。
水を大量に飲み込んでしまっているようだ。
必死に手を動かすAに、止血した隊士も固唾を飲んで見守る。

水を吐き出す気配はなかった。
Aは目を閉じ、胸部から手を離す。

「お、おい……続けろよ！まだ助かるかもしれないだろ！」

「黙って」

Aは「ふっ……」と短く息を吐き、両手を胸部にもっていくと、心肺蘇生のように手は動かさず、ただ掌を翳した。
何をしているんだとまた声を荒らげようとした隊士は、Aの真剣な表情を見て固まった。その顔からは並々ならぬ集中力を感じる。

すると、Aの両手から淡い光が溢れた。

驚いて開いた口が塞がらない隊士。

突然光り出した掌は、夢でも見ているかのような光景だった。しかしどこか神々しく、安心させるような光だ。

「…………っゲホ！ゴホゴホ！」

「！だ、大丈夫か！？」

大量の水を吐き出した隊士。驚いて背中を摩ってやるが、頭の中は混乱していた。
さっきまで心肺蘇生をしても動かなかった人間が、光の溢れる手を翳すとすぐに水を吐き出した。一体どうなっているのか……。

すると、隣に気配を感じて視線を移す。
いつの間にかAが左足に手を当てていた。あの光を放ちながら。

「おおおおい！なにすんだ！」

「動かないで。応急処置してるから。その間、上流で何があったか話してくれない？」

「はぁ？……わけわかんねぇ……」

もうこれは、自分の頭では処理できそうにない。
そう思った隊士は、先程まで戦っていた上流の様子を話し始めた。

「……ありがとう。じゃあ私は行くから、ここで隠を待ってて」

「あ、おい！ …………足はえーな」

話を聞いて応急処置が終わるとAはすぐに立ち上がり、上流へ急いだ。
風のように走り去るその背中を、隊士は呆然と見つめるしかなかった。

【にんにんコソコソ噂話】

･チャクラ
忍術を使用するためのエネルギー。
･医療忍術
手のひらにチャクラを集めることで外傷を治すことができる。