アーモンドのはなことば (ページ11)

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ぴゅ〜〜〜〜と t ページ11

『Aさん、もう時間です』

「ん〜〜〜っ、」

『Aさん起きて』

「やだ、あともうちょっとだけ、」

・

寄席と寄席の合間時間
ご飯を食べて相方と次はなんのネタをするか軽く打ち合わせをしたら、束の間の休憩タイム

私はちょっとの隙間時間でも睡眠に費やしたい人間なので、楽屋のベッドを最大限に活用させてもらっている。

が

今日は土曜日の寄席ということもあり、楽屋には大勢の芸人がわちゃわちゃしていて私の定位置のベッドも入れ替わり、立ち代わりで先客がいて中々スペースがあかない、、、

『Aさんずっと立ってますけどどうかしたんですか？』

「あ、竹内、ちょっとお願いなんだけど、竹内の背中借りれたりする？」

『え？背中？』

「お願い、、」

え？と状況を理解していない後輩を壁際のブロックイスに横向きに座らせて
その背中に自分の頭を預ける。

『Aさん？俺これいります？壁にもたれれば良くないすか？』

「しんどかったら適当にどいてもいいよ。でも温もりほしいからいてくれたら嬉しい。12:45になったら起こしてほしいかも。」

淡々と自分の意志だけを伝えて目を閉じる。

適当に退いてもいいよ。と言ったものの、この15分間を耐えてくれそうな優しい竹内を選んだのは秘密。

・

『Aさん、もう時間です』

「ん〜〜〜っ、」

『Aさん起きて』

「やだ、あともうちょっとだけ、」

想像以上に竹内の背中が心地良くて、あっという間に経ってしまった15分間が残酷に感じる。

もう少しだけこの温もりを感じたくて猫のように頭を擦り付ければ、

『Aさん起きないと出番きちゃいますよ』

と言いつつ、こっちに振り向いて一定のリズムで頭をぽんぽんとしてくる竹内。

「ねえ。また寝ちゃいそうじゃん、」

『舞台終わったらまた俺の背中貸しますから。だから起きて』

「はぁい、」

少し不貞腐れながら返事をして、竹内と一緒に伸びをする

私達の一連の様子を見ていた周りの芸人達が、お前ら付き合ってんの？とガヤを入れてくるが、起きたてでポヤポヤしている私には面白く返す言葉が見つからず、無言でいると

『いや！Aさん否定しないと！俺達誤解生んじゃいますよ！！！』

「竹内なら悪くないよ」

『はい！？この人寝起きにもほどがあるね！』

ほんのり耳が赤くなっていく竹内を見て心がふわっと暖まる理由には、もう少しだけ気づかないふりをしたい。