希望、それは戯言。2 (ページ3)

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既に病室にいた康二と翔太からの連絡を受け、全員で病室に入れば、まだ少し苦しそうな目黒の姿が目に飛び込んできた。

康二とラウールが泣き出したと思えば、佐久間まで目を潤わせて感情がないの！？だなんて言ってくる始末。

目黒の声は聞けないが、不思議そうに辺りを見回してる限り、もう問題はなさそうだ。

それからは、交代で最低1人は毎日行くようにした。今日は俺だけだ。扉を開ければ体を起こして窓の方を見ているあいつの姿。

「…調子はどうなの。」
mg『もう平気っす。』
「そう言って無茶すんのが目黒なんだよな…」

現に病み上がりのくせにラウールを逃がす為に脳筋3人と戦っただなんて聞かされた時は思わず溜息をついた。

まだ詳しくは聞かされていないが、今はあのスーツの連中に追われているらしい。厄介事にしっかり首を突っ込んでいくのがうちのグループの特徴の一つかもしれない。

適当にお見舞いとして持ってきたものを渡せば、苦い顔をする。…まあ、後ろの棚にあるものを見れば分からなくもないが。

それくらいの事をした代償だ。あの時はほんとに大切なものを失うかもしれない。そんな事が頭によぎって生きた心地がしなかった。

人の吐血なんてそうそう見ないし、それを同じ人間が2回もしている所を間近に見て、気を抜けば倒れるかと思ったほどだ。

「本当に死なずにすんでよかった…」
mg『その件は迷惑かけてごめんなさい。』
「いや、謝らなくてもいいよ。でも、無理だけはしないで。あと、1人で行こうとするのも。」

目黒が、という報告を聞く度に鼓動が早くなって仕方ないんだ。どうか、もう無茶だけは。

mg『俺、1回だけ何処からか声がしたんです。』
「…うん。」
mg『死ぬなよって。その声が聞こえて、何となく行かないとって。あの時の声って阿部くんですよね。』
「っ！」

無我夢中で発した言葉が目黒に届いていた。それだけで何故か無性に嬉しくなった。

mg『ありがとうございます。俺、それがなかったらあの空間でずっとさまよってたかもしれないです。』
「そっか。届いてよかった。」

目黒の話曰く、康二の友人らしき人に会って、帰る道まで案内してくれたらしい。光に包まれた後、また道が広がっていて、何処に進めばいいかわからなくなっていた時に俺の声が聞こえて、無事に戻れたという。

そんな非科学的な事を信じられるかといえば、否だが、何故か率直に信じてみてもいいかとも思った。

こうして、目黒が生きている。それだけでよかった。
いつからこんな風になったんだろうか。