希望、それは戯言。2 (ページ16)

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声が出なかった。淡々と話すその表情はどこか苦しそうで。思わず唇を噛んだ。

nb「おい、血出るだろ。もう暫く使えねえんだから仕事増やすなよ。」
「…どうして、そんな」
nb「こうでもしなきゃやってらんねえんだよ。お前がここに居るって事は他の奴らもいんだろ。…っざけんじゃねえぞ、あの糞野郎」

豪快に頭を掻いて舌打ちをする翔太くんを見て、俺は何も出来なかった自分を悔やんだ。状況も何もかも分かっていたのに、もう遅かった。手遅れだった。

nb「おい、何突っ立ってんだ。行くぞ」
「行くって何処に」
nb「こっから出るに決まってんだろ。9人でな」

そう手を引っ張られながら、背中を見つめる。何処までも前向きな彼に驚愕した。でも、今はこの人に着いていくのが最善だ。その後すぐにあいつら何処だと聞いてきたのはなかったことにしよう。

nb「随分ご丁寧だな。」
「やっぱそう思いますよね。」
nb「ま、今はそんな事気にしててもしょうがねえか。入るぞ。」

少し離れた部屋の前に辿り着けばまた翔太くんの部屋と同じ事が書かれていた。翔太くんによって扉が開かれたかと思えば、部屋の状況は最悪だった。

「これ以上、っ近づくな！！」
nb「おい！勘違いしてんのか知らねえけど、俺らだって！」
「それじゃわかんないっすよ。落ち着いて、目黒と翔太くんだから。」

そういえば、目を数回瞬きさせ、俺らに向かっていた部屋中の無数のナイフが消えた。彼のぶらりと下がった手元のナイフだけがきらりと光っていた。

「めめ…？翔太くん…？」
nb「ああ、もう大丈夫だからな。康二」
kj「っ、うぅ」

翔太くんが駆け寄って抱き締めれば、康二は腕の中で静かに嗚咽を漏らした。もう1人じゃないという事に安心感を覚えたのだろう。暫くすれば、鼻をすすりながら恐る恐る口を開いた。

kj「俺、俺変な体になってもうた…！」
nb「安心しろ、お前だけじゃねえ」
「俺も。見ればわかるでしょ」
kj「へ！？めめ！その羽！？」
「…あんまり見られたくないんだけど」
kj「ああ、ごめんな…」

翔太くんも一通り説明すれば康二は更に瞳を潤ませて2人とも大変やったな…なんて零す。それは康二もでしょとは言わない事にした。

nb「ほら、何時までも泣くな。先を急ぐぞ。」
kj「んん、何処に行くんや…」
「脱出する。全員で」
kj「…皆おるん？」
nb「確証はない。でも、既に3人集まってんだ。たぶん…いるだろな」
「逆にいない方が不思議だし」
kj「わかった。俺も早く皆に会いたいしな…！」