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ざああ……ざああ……。
川の流れる音を聞いて、流れる土混じりの水を見ながら、剣心は物思いに耽っていた。
(……やつに勝てるか？ 逆刃刀で)
"勝てるか、じゃないでしょ。勝たなくちゃ。逆刃刀で"
ざく。
(…………足音)
ざく、ざく、足音。だんだん近づいてくるそれに警戒して、逆刃刀の鍔を浮かせる。
「……けーんしぃーん……？」
"きゃーッ!! でたぁー!!"
女の子みたいな悲鳴をあげる剣にもびっくりしたが、女の声にも驚いた。振り向くと般若のような形相をした薫がいて、ピンッと背筋が伸びる。
鍔を支えていた指が動揺のあまりずれて、刀の根元の方で切れる。ぶしゅー、と血が吹き出た。痛い。
「みぃーつけたぁー！」
(刃衛よりおっかないでござるなぁ……)
"分かる"
むっつりとした表情のまま剣心の隣に腰を下ろした薫が切り出す。
「話を聞いたわ。私もここに残る」
"マジか"
「……刃衛のことは聞いたでござろう？」
「聞いたわ。……でも残る」
隣を盗み見る。冗談を言っているような顔ではない。
「誰かを守りながらの戦いになると、刃衛にはとても勝てない」
珍しく弱気な剣心に少しだけ眉を下げて、薫が立ち上がった。
「……薫殿？」
薫が、髪を結わえていたリボンをほどいた。
ポニーテールが崩れて、長い髪が肩に広がる。
「……一番気に入ってる、藍色のリボン。剣心に貸すわ」
"これで結えと？"
「いや、拙者借りても……」
「いいから借りる！」
「はい！」
押し負けて、リボンを受け取った。
「貸すだけだからね」
ん？ ん？ と、剣心がリボンと薫を交互に見やる。
「返しに来なさいよ。それ捨ててそのままどっか行っちゃったりしたら、……許さないからね」
髪を下ろして、頬を染めて、いつもと違う雰囲気の薫に、思わず剣心は見惚れてしまった。
「……」
「…………」
「「…………」」
"ぐああああ……やめて……僕こういう……いかにも少女漫画って感じのやつ、苦手……ぐああああ"
こほん。剣をたしなめるように軽く咳をして、薫に微笑む。
「分かった。必ず返しに帰るから、安心して道場で待つでござるよ」
「……よし」
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作者名：アオ | 作成日時：2017年3月3日 17時
