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ほお、と感心したようなため息をついて、にやりと笑みを深くする。
「まだ動けるのか……ただの虫けらではないようだなぁ……」
ちゃきん。黒笠は刀を持ち直す。ターゲットを左之助にして、満足に動けない彼に近寄る。
「どこをはねて欲しい? 腕か? 首か?」
ぐ、と歯を食いしばる左之助に笑いながら、一歩一歩を踏みしめる。
そんな黒笠に、声がかかった。
「二階堂平方、心の一方……またの名を居すくみの術」
左之助の影から飛び出して、黒笠の刀を弾きながら後ろへ回る。
「やはりおぬしであったか……幕末、京都で聞いた。目から発した気を相手の目に叩き込むことで金縛りにさせる、心の一方の使い手……はぐれ人斬り、鵜堂刃衛」
ぱさり。黒笠……刃衛の被っていた笠が二つに割れて地に落ちる。
「俺も聞いたよ……飛天御剣流を使う伝説の人斬り……頬に十字傷を持つ……緋村抜刀斎!!」
"このひとこわい……"
「ああ、楽しい、こんなに楽しいのは久しぶりだよ……まさか抜刀斎に会えるなんてなぁ……金と権力に腐った豚などもうどうでも良い、標的はお前に変更だ! 元最強の維新志士!!」
刃衛がまた目を見開いた。どうやら、あれが心の一方の発動条件らしい。
一瞬だけ視界がぶれる。
"うお……"
「剣心!」
左之助だ。その言葉に答えるように、ぐ、と手を握って、剣心はハァッ! と叫ぶ。
その瞬間に、手錠が外されたかのような開放感を覚える。
"おお、すごいけどどうやったの剣心!?"
「心の一方は気合と気合いの勝負……おぬしに等しい剣気を持てば、かからぬでござる!」
"あ、意外と根性論なんですね!?"
呆気にとられる剣の言葉を聞かず、剣心は続ける。
「おぬしは幕末、多くの人を斬った! 敵味方の区別なく……! しかし今は平和の世、殺戮が日常だった幕末は終わったでござる……目を覚ませ、おぬしのためにも!」
「耳を疑うな」
刃衛が呟いた。
「幕末、非情の人斬りと謳われた緋村抜刀斎が……」
「ハァッ!!」
"うわビックリしたぁ!"
刃衛が言い終わる前に、左之助の気合いが入った声が轟く。どうやら心の一方を破ったらしい。
その勢いのまま、左之助は近くにあった彫像を掴む。
「うお、おおおっ、おらぁっ!!」
斬馬刀を片手でぶん回す筋力を生かして、固定されていた彫像をもぎ取った。
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作者名:アオ | 作成日時:2017年3月3日 17時