検索窓
今日:14 hit、昨日:8 hit、合計:6,392 hit

【19】 ページ19

__左之助の拳が、突き出されたままでいなければ。



左之助が拳一つで男を吹っ飛ばしたと気づいて、剣がパチパチと気の抜けた拍手をした。

"……さ、さすが左之助さん……尊敬するでござる……"

(剣にその口調で喋られると違和感しか感じないでござる! )

"許して欲しいでござる!"

ふざけた会話を終わらせると、左之助の立ち上がる音が聞こえた。瞳孔の開ききった顔は、元々のつり目も相まって、修羅のように恐ろしい。

「俺ぁ今気が立ってんだ! 口の利き方に注意しなぁ!」

吹き飛ばされてグッタリした男を抱えたひょろっちい男が、体に似合わないドスの効いた声で叫んだ。

「てっ、てめえ、こんなことしてただで済むと思ってんのかよ! 俺たちゃ観柳さんの私兵団員だぜ……!」

顔中にびっしりかいた冷や汗が小物感を助長している。

こころなしか声も震えているような……。

「注意しろっつってんだァ!!」

パリィン! 左之助が全力投球したボロの茶碗が、ひょろっちい男の鼻先に当たって砕けた。剣心には骨の折れたような音も聞こえたが、彼は大丈夫だろうか。鼻血が地面にこびり付くような事にならなければいいが。

二人もろとも崩れ落ちて見えなくなったので、意識を失ったのだろう。「カンリュウさんの私兵団員」がどうたらと言っていた割には大したことないなぁ。剣は心の中で指を差して笑っておいた。

「武田観柳の、手下どもかっ……!」

「いくら左之さんでも、相手が悪いぜ……」

"カンリュウってのを知ってるの?"

「武田観柳、とは?」

剣心と剣の声が被った。

「青年実業家……とは表の顔。裏じゃ何十人と私兵を持ち、かなりあくどい商売してるって噂の、胡散くせえ野郎だ」

忌々しげな顔を隠しもせずに、左之助は恵を向いて問いかけた。

「おい、あんたアイツとどういう関係だ?」

「私は何も知らないんです、本当に……!」

__すると。

「嘘はいけねぇなぁ、高荷恵!」

心底から面白がっているような、けれどどこか芝居がかったような。低い男の声が、恵の言葉を遮った。

「っこいつ、いつの間に……!」

その声の視線を辿って玄関を向けば、いつの間にやら、小柄で特徴的なツリ目の男が、くつくつと喉を鳴らして笑っていた。

「くっくっく……いたいけな女を装って同情を買おうなんざぁ、大した女狐だ。……お前を監視してるのは、このべシミもだってことを忘れてもらっちゃ困るぜ」

【20】→←【18】



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (1 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
17人がお気に入り
設定タグ:るろうに剣心 , 憑依
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:アオ | 作成日時:2017年3月3日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。