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「……うふ、ははは」

笑いながら立ち上がる。抜刀斎のような男が警戒するのを感じた。

「……もうムリだよ。片腕だけ、脇差一本。優しい剣心と違って僕は容赦しないよ。死ぬ一歩手前まで追い詰める。……勝てるはずないでしょ、今のおまえじゃ」

「いいや、まだ終わっていないとも」

抜刀斎のような男が振り返った。

その目の前でうっそりと笑って、刃衛は自分の胸に刃を突き刺した。

「後始末が残っている」

自決を選んだその時の、目の前の男の歪んだ顔は、冥土の土産に充分だった。




白目をむいて、凶悪な笑顔のまま事切れたヒトだったものを見下して、剣は胸のモヤモヤしたものを持て余していた。

「……ち。後味悪い終わり方しやがるな、こいつ。地獄落ちろカス……いや、思えば地獄は確定だったわ……」

ううん、と唸りながら頭を搔く。固唾を飲んで見る薫に気づいて、にこっと笑いかける。

「安心して! もう終わったから、剣心に代わるよ。でも、僕のこと、他のみんなにはナイショにしておいてね」

唇に人差し指を当てた。薫は戸惑いながらも、コクリと頷く。

「あ……あなた、結局、だれなの?」

「……ひみつ。僕から教えるのって、フェアじゃないから。剣心が教えようと思う時まで待ってあげて」

剣心は僕と違って、頭の中から会話するやり方知らないから。よく分からないことを嬉しそうに言って、男は手を振った。


「バイバイ。無事でよかった、薫ちゃん。これに懲りたら、少しおしとやかになるんだよ」

男は目を閉じて、たたらを踏んだ。

「剣心っ……!?」

倒れそうになる体を支える。意外と重い。

「……、……おろ……?」

「……剣……心?」

「か、薫殿……? ああ、よかった。無事だったでござるか」

目を覚ましたのは、いつもと同じ、柔らかく笑う剣心だった。

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作者名:アオ | 作成日時:2017年3月3日 17時

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