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「……うふ、ははは」
笑いながら立ち上がる。抜刀斎のような男が警戒するのを感じた。
「……もうムリだよ。片腕だけ、脇差一本。優しい剣心と違って僕は容赦しないよ。死ぬ一歩手前まで追い詰める。……勝てるはずないでしょ、今のおまえじゃ」
「いいや、まだ終わっていないとも」
抜刀斎のような男が振り返った。
その目の前でうっそりと笑って、刃衛は自分の胸に刃を突き刺した。
「後始末が残っている」
自決を選んだその時の、目の前の男の歪んだ顔は、冥土の土産に充分だった。
◆
白目をむいて、凶悪な笑顔のまま事切れたヒトだったものを見下して、剣は胸のモヤモヤしたものを持て余していた。
「……ち。後味悪い終わり方しやがるな、こいつ。地獄落ちろカス……いや、思えば地獄は確定だったわ……」
ううん、と唸りながら頭を搔く。固唾を飲んで見る薫に気づいて、にこっと笑いかける。
「安心して! もう終わったから、剣心に代わるよ。でも、僕のこと、他のみんなにはナイショにしておいてね」
唇に人差し指を当てた。薫は戸惑いながらも、コクリと頷く。
「あ……あなた、結局、だれなの?」
「……ひみつ。僕から教えるのって、フェアじゃないから。剣心が教えようと思う時まで待ってあげて」
剣心は僕と違って、頭の中から会話するやり方知らないから。よく分からないことを嬉しそうに言って、男は手を振った。
「バイバイ。無事でよかった、薫ちゃん。これに懲りたら、少しおしとやかになるんだよ」
男は目を閉じて、たたらを踏んだ。
「剣心っ……!?」
倒れそうになる体を支える。意外と重い。
「……、……おろ……?」
「……剣……心?」
「か、薫殿……? ああ、よかった。無事だったでござるか」
目を覚ましたのは、いつもと同じ、柔らかく笑う剣心だった。
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作者名:アオ | 作成日時:2017年3月3日 17時